私は境界知能の当事者ですが、これまで自分のことを理解し、配慮して欲しいことを伝えるのも困難でした。今回は、境界知能当事者が行って欲しい支援や配慮などについてまとめてみました。
はじめに
「境界知能を持っているけど、支援制度や配慮がほとんどなくて辛い」
「境界知能なんていいことない!」
境界知能当事者の方は、一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。私自身、境界知能の特徴なのか自分のことを理解し、配慮して欲しいことを伝えるのも困難でした。
しかし、今ではYouTubeなどで発信活動をしていく中で、「こんな支援や配慮、関わり方をしてくれたら嬉しいな」と気づくことも増えています。
一番の気づきは支援や配慮がないほうがいい場合もあるということ。
「えっ?配慮や支援はあったほうがいいでしょ!」と思う方も多いでしょう。そこで今回はその疑問を解決するために、以下の内容についてお伝えしていきます。
- 境界知能当事者への支援の現状
- 境界知能当事者が行ってほしい支援や配慮とは
- 境界知能当事者への関わり方や気遣い方
- 支援や配慮がないことによる意外なメリットとは
この記事は、境界知能当事者や境界知能のお子様を持つ親御さんはもちろん、「境界知能の方と何かしらの接点がある方」に特に役立つ内容になっています。
5分程度で読めますので、ぜひ最後まで御覧ください。
境界知能当事者への支援の現状
一番の問題点は、「境界知能当事者の方」への支援制度がないことです。正確にはあるのですが、「境界知能」の認知度の低さから公表されていなかったり、調べてやっとわかることがあります。
1970年代まで境界知能(IQ70〜84)の方は知的障害に分類されていましたが、「該当者が多い」などの理由で支援の枠から外れることになりました。
最近になってようやく境界知能という概念が徐々に広まってきましたが、該当者が多いにも関わらず、そこまで認識されてはいないと感じています。
境界知能当事者が行ってほしい支援とは
まずは認識を広めることが第一かと思われますが、それと並行して支援体制が整えられていけばと願っています。
では、具体的にどのような支援体制があれば境界知能当事者は生きづらさを軽減できるのでしょうか。
それは、その根本原因である「認知機能の低さ」に対する支援です。
認知機能とは、物事を認知する力のことです。たとえば、人は「リンゴ」をおいしい果物と認知できているからこそ、安心して食べられますが、認知機能が弱いとそもそも「リンゴ」を認知できないか、「リンゴはそもそも食べられない」というような誤った認知が発生することがあります。
仕事や日常生活では理解したり、伝えたりすることが必須ですが、そのためには認知するという過程が必要です。この認知機能が改善したり、支援する体制ができれば根本的な生きづらさはかなり減るのではないでしょうか。
境界知能当事者への関わり方や配慮
これまで、境界知能当事者が求める支援をお伝えしましたが、実際にここ数年で必要な支援体制が整ってくる可能性は低いかもしれません。
当事者が自分で工夫したりすることで改善できることもありますが、私は周囲の方の協力が必要だと思っています。ただ、どのように関わればいいのかわからない方や、接し方に迷ってしまう方もいるかもしれません。
ここで、私が境界知能当事者の周囲の方にお願いしたい具体的に3つの関わり方や配慮をお伝えします。
- 自己理解を促す
- 理解の進捗度を確認する
- 将来に希望を持たせる
1つずつ解説していきます。
1.自己理解を促す
まずは、境界知能に関する概念や知識を本人に理解して貰う必要があります。本人が境界知能と認識しているケースは少ないためです。
自己理解を手助けしてくれるツールは色々あります。たとえば、自覚がない方の場合、WAISなどの心理テストを受けてもらうことも一つの方法です。WAISテストとは、病院で受けられる成人の知能を測定するためのテストのことです。
数字としてIQが見えることで納得する人もいるはずです。テストの結果、IQが70~84の範囲だと境界知能ということになります。
しかし、正確なIQを知るときは、発達障害やうつ病などで病院やカウンセリングを受診するときがほとんどです。境界知能の方でも、他の障害を持っていない方はIQテストを受けるきっかけがあまりないでしょうし、テストを受けること自体が難しいことも考えられます。
私の場合も、最初に発達障害の診断のためにIQテストを受けたところ、IQが境界域にあることが発覚しました。そこから、宮口幸治さんの『ケーキのきれない非行少年たち』を読んで自分が境界知能当事者であるという確信を抱きました。
自分で調べてみたい、学びたいという方であれば、本や動画を見てみるのもいいかもしれません。
2.理解の進捗度を確認する
私も含めて、境界知能の当事者の方は、健常者に比べて理解度が低い傾向にあります。先ほどお伝えしましたが、認知機能の弱さが根本原因だと考えています。この理解度の低さは色々な場面に影響を及ぼします。
たとえば以下のような場面で「本人がどの程度理解しているか」の確認をしてもらえると助かります。
- 仕事を教える場面
- 自分の特性について伝える場面
- 重要なコミュニケーションをしている時
一言に境界知能と言っても、人によってどのような方法だと理解しやすいかはちがいます。たとえば、なるべく言葉で説明をしてもらいたい人もいれば、図など視覚的な情報の方を使った方が理解をしやすい人もいます。
どのような伝え方をしてほしいかは人によってちがいますが、多くの人に共通するポイントもあります。特に大事な場面では、以下のことに気を付けながら話をしてみると、お互いの認識のズレを防ぎやすくなります。
- 一文を短く伝える
- 事実と解釈を分けて伝える
- 最も大事なことだけは必ず伝わるようにする
長々と話をすると、話を聞く人が情報の取捨選択をしなければいけません。本当に重要なことに焦点を絞って、短く、わかりやすくすると、伝わりやすくなります。特に、大事な場面ではこの3つを心がけていただけると嬉しいです。
3.将来に希望を持たせる
境界知能の当事者は、将来への希望を失っていることが多いです。幼い頃からの失敗体験や、他人との比較によって意識せずとも劣等感を感じるからです。私もそのうちの一人でした。
境界知能の概念を知ると「健常者よりも劣っている人」というイメージを持たれるかもしれませんが、境界知能というのは本人の一部でしかなく、当事者には長所や得意、好きなことがあるはずです。
私の場合、5年半の社会人生活では仕事ができませんでした。しかし、現在はYouTubeや電子書籍の販売などの好きなことを行った結果、徐々に成果につながっています。自分を認めるためにも、嫌いなことや苦手なことに注力するよりも、大切です。
幼い頃から繰り返し失敗をしていたり、他人と比べて自信を無くしたりしているときに、希望を持ち続けることは難しいことです。そうしたときに、周りの人の承認や支えはとてもありがたく感じます。
将来に希望を持つことができるようになれば、少しずつ本来の力を開花させたり、いい方向に進んでいけたりするのではないでしょうか。
まとめ:境界知能当事者への支援は適度に
ここまで境界知能当事者が、周りの方にして欲しい支援や関わり方をお伝えしました。
境界知能の当事者はその特徴を持っていても本人が気づいていないことも多いです。
そのため、過度な支援は当人にとっても心地よいものにならないケースもあります。支援を必要としていても、本人が支援をされることに慣れていないのです。まだまだ支援体制も整っているとは言えません。
また、境界知能の方に関わる方がこれらのことをすべて意識する必要はないと思っています。頭の片隅に置いておいていただけたら幸いです。
YouTubeチャンネルを運営しております。理解促進などにぜひ活用してみてください。