成人向け知能検査のWAISテストって何?ADHD当事者が受けてみた

スコアグラフ

私はADHDと診断された翌年に、成人向け知能検査である「WAIS‐Ⅲ」を受けました。今回は、WAISテストとはどのような検査なのか、実際に私が受けた経緯とその結果についてお伝えします。

はじめに

みなさんは「自分のIQがどれくらいなのか知りたい」や「自分の得意なこと、不得意なことをより詳しく知りたい」と思ったことはありますか?

私は2018年にADHDと診断されて、翌年に成人向け知能検査である「WAIS‐Ⅲ」を受けました。

成人向けの知能検査であるWAISテストは発達障害当事者が受けることの多いテストなのですが、これは発達障害の有無にかかわらず、16歳~90歳の人であれば受けられるものです。

今回は、WAISテストとはどのような検査なのか、実際に私が受けた経緯とその結果についてお伝えします。

成人向け知能検査、WAISテストとは?

WAISテストとは、医療機関で受けられる成人向けの知能検査のことで、言語理解や作動記憶などの領域毎に数字で検査結果が出るため、発達障害の人の得意、不得意をとらえるために用いられることがあります。

現在、最も新しいテストは「WAIS-Ⅳ」。精神科のクリニックなどで受けることができますが、全てのクリニックが対応しているわけではないので、気になる方は一度調べてみてください。

クリニックの受付

私がWAISテストを受けた経緯

私は2018年にADHDと診断されました。私の通っていた精神科のクリニックではWAISテストを受けられなかったのですが、「自分の特性についてもっと詳しく知りたい」と感じたため、2019年に他のクリニックでWAIS-Ⅲを受けました。

テストのための通院は3回。初回は医師からの診察、2回目に検査を受けて、3回目にテスト結果のフィードバック。費用は3回合わせて25,000円くらいだったと思います。

紹介状を書いてもらい、医師の診察を受けて、臨床心理士にテストを実施してもらいました。テストにかかった時間はおよそ2時間で、図の通りにパズルを組み合わせたり、学校で習ったような世界史の人物名を答えたり、数字を暗記して答えたり、イラストからシチュエーションを想像したり、様々なテストがありました。

テスト以外にも、これまでの様子の聞き取りや、自分以外の第三者からの評価を提出したり、子どもの頃の成績表が必要だったり、複合的に見てもらいました。テストを受けるだけでもかなりヘトヘトになった記憶があります。

テストの数週間後、クリニックで臨床心理士から詳しい結果を聞きました。

私のWAISテストの結果

私のテスト結果は、以下の通りです。結果はテキストで下記のようにまとめましたが、実際に渡されるテスト結果は折れ線グラフなどで記載されています

  • 全体性IQ:109
  • 言語性IQ:118
  • 動作性IQ:95

より詳しいジャンル別の結果は以下の通り。

  • 言語理解:116
  • 知覚統合:95
  • 作動記憶:100
  • 処理速度:86

全体性IQは109。総合的には平均の領域ですが、得手不得手のばらつきは大きいです。

私が最も高かったのは、言語理解。言語理解は、言葉を理解したり、言葉で表現したりする能力を表しています。

「語彙力が豊富で、社会的なルールや抽象概念の理解が優れている一方で、一般知識の結果からは、興味関心に偏りがあるのではないかと推察しました」というフィードバックがありました。

知覚統合は、目でとらえた情報の処理能力のことで、作動記憶は、計算力や耳から入ってくる情報の処理能力のこと。この2つの結果はほぼ平均値でした。

また、「目で見た情報や耳からの情報の扱いの結果は平均の範囲内なものの、検査中に疲れている様子もあり、かなりのエネルギーを要しているように見えました」というフィードバックもあり、自分の中で、耳からの情報の処理や、図形などの資格情報をとらえることは苦手な部類だと思っていたので、平均という結果が出たのは少し意外でした。疲れやすいのはご指摘の通りです。

最後に、私が最も苦手だったのは処理速度。処理速度とは、目と手を効率よく動かせる能力です。「正確性はあるけれど処理量が平均より劣っている」という結果が伝えられましたが、自分の中でも、正確性とスピードを同時に求められる作業は苦手な自覚があったので納得です。

パズルのピース

私が具体的に得意なこと、苦手なこと

「言語理解が高くて、処理速度が遅い」と言われても、具体的にどんな場面でどう出てくるのか想像しづらく、私自身も「この影響ではないか」という具体例を思い出すことで、自己分析しました。

言語性IQの高さは、言葉で説明されたことの理解力が高いこと、自分で説明することが得意なことに表れています。

たとえば、私は職場などでも、新しい仕事の理解は比較的速いほうだと感じています。そのため、手順書やマニュアルを作って図や文章で説明すると感謝されます。報告書をまとめたり、文章で記録をとったりする仕事は得意です。Webライターの仕事ができているのもここのおかげです。

一方、動作性IQの低さは、手を動かす単純作業系のスピードが遅いことに出ていると思います。

たとえば、私は以前、販売職をしていたときに品出しのスピードが遅くて「一日にこの量終わらせてください」と指示された分がどうしてもその日中に終わらなくてよく残業をしていました。商品の位置はわりと覚えていたのですが、おそらく手を動かすスピードが遅かったのでしょう。レジ打ちも苦手だったので小売業との相性はかなり悪かったです。

自分の苦手なことを聞かれたら「スピードと正確性が同時に要求される仕事が苦手です」と伝えるようにしています。

まとめ

今回は、成人向け知能テストのWAISテストとはどのような検査なのかをお伝えした上で、実際に私が受けてみた経緯や結果などについてお伝えしました。

WAISテストに限った話ではありませんが、結果の数値は絶対的に変わらないものではありません。その時々の調子によって上下することがあり得るので、再検査をすればまたちがう数値が出ると思います。

テストの数値が絶対的ではないとしても、私は実際にテストを受けたことで自分の得手、不得手を整理し直すことができたので、受けてよかったと思っています。

得意なことや苦手なことを改めて特定できて、対応策を考えやすくなりました。自分では苦手だと思っていた分野の結果が意外と平均値だったこともあり、検査を受けたことで自己認識を修正することもできました。また、他の人よりも疲れやすいというような発見もあり、自己理解の手助けになりました。

WAISテストは発達障害の人のためのテストとして有名ではありますが、当事者でないと受けられないテストではありません。発達障害の当事者だけでなく、「自分は何が得意で、何が不得意なのかを詳しく知りたい」という方にもおすすめしたいです。

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ABOUT ME
1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。 就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。