前回のコラムでは「理学療法士と言うシゴトはどんなシゴトなのか」という事と「理学療法士は頭脳労働であり肉体労働であり感情労働である」と言う事をお伝えしてきました。
今回のコラムでは「理学療法士は対人援助・対人支援のシゴトだ」と言う事をお伝えしたいと思います。
1.対人援助・対人支援とは
『対人“援助”』『対人“支援”』とても似たような言葉ですよね。しかしこの“援助”と“支援”と言う言葉の意味には次のような違いがあります。
援助とは…〘 名詞 〙 困った状況にある人をたすけること。たすけ。
支援とは…〘 名詞 〙 活動を容易にするためにささえ助けること。援助。デジタル大辞林より
と、この二者で大きな違いがないように思われるかと思います。
ただし、よーく見ると大きな違いがあります。
『援助』と言うのは“困った状況にある人を助けること”とありますよね。つまり『困った状況にある人の1~10まで全てを手助けする』と言う意味が隠れています。一方『支援』と言うのは“活動を容易にするために、支え助けること”とあります。『援助』とは異なり『活動の一部を助けるだけであり、最終的な行動や責任などは、あくまでもその人本人に委ねられている』と言う解釈ができます。
厳密に言うと、この2つの言葉の持つ意味には違いがあるのですが、普段、私達が日常的に使う場合、あまり意識して区別することなく使われることが一般的です。
2.対人援助職・対人支援職とは
では、対人援助職・対人支援職にはどの様な職種が当てはまるのでしょうか。表にまとめてみました。
パッと思いつくのは医療従事者や介護職者等だと思いますが、教員や保育士、警察官や消防士なども、広い意味で対人援助職・対人支援職といえます。
“対人”と付くからには、そのシゴトの対象となるのは『人』です。当たり前ですが(笑)そして理学療法士も『直接的援助』をする『対人援助職・対人支援職』だということは、もうお分かりですね?
ただ、前回のコラムでお伝えした『感情労働者』と言う側面でシゴトを捉えた時、重複するシゴトもありますが、上の表を見て分かる通り、『ただ、人を相手にするシゴトではない』と言う事がお分かりかと思います。
『対人援助職・対人支援職』と言うのは、対象とする人の健康・生活・人生に大きく関わる、とても重要でとても荷の重い(笑)シゴトだ、と言うことです。
3.対人援助職・対人支援職に求められるモノ
一般的に対人援助・対人支援は、社会生活を送るうえで何らかの問題を抱えている個人や家族に対して、その問題解決や課題遂行を援助することを指します。利用者個人を主として考え、その環境に適応するために必要な援助を行います。
そしてそれらのシゴトを担う人材の基本的な姿勢・資質には以下のようなものが必要だと言われています。
- 個別化:対象者やそのご家族をかけがえのない個人として尊重する。
- 自己決定:対象者やそのご家族の自己決定を促し、尊重する。
- 受容:対象者やそのご家族の気持ちをありのままに受け止める。
どれもこれも、簡単そうで非常に難しい姿勢・資質です。
対人援助職・対人支援職と言うのは、援助や支援する側の価値基準や倫理観などは、ひとまず脇へ置き、対象者とその家族のありのままを大切にしなければなりません。
こっちの選択のほうが絶対楽なのに…
こうするともっとスムーズなのに…
こっちのほうが、将来的にはいい条件なのに…
と、援助や支援する側が思ったとしても、最終決定は対象者とその家族です。ある程度の、助言やアドバイスをしたとしても、対象者やその家族が出した決定を強く否定したり根底からひっくり返すような言動はしてはいけません。
こーゆーところが、非常に悩ましいのです。
さて、今回は『対人援助職・対人支援』のシゴトについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?実際に、このようなシゴトで働いてみると、本当に奥深く、ただ「人を相手にする」と言う意味だけではない、と言う事を知っていただきたいと思っています。
次回は、理学療法士は『チームの一員』であり、チームで人を支えるシゴトの一つだ、と言う側面からお伝えしたいと思っております。