風俗業界は精神障害者の女性のセーフティーネットではありません

雨の降る窓に映る女性のシルエット。

「風俗で働く女性の中には、メンヘラがたくさんいる」

「メンヘラのセーフティーネットは、風俗だ」

これはもはや、常識かのように世間に飛び交っている噂です。

しかしメンヘラという軽々しい言葉で片づけられている中には、精神障害者や発達障害者、そして軽度知的障害者の女性も数多くいます。

精神障害やその他の障害を持つ女性が風俗嬢として働くと、いったいどういったことになるのでしょう?

その答えを、統合失調症を患いながら風俗嬢として仕事をしていたわたしは、よく知っているのです。

今回は皆さまに、障害者の女性と風俗業界という切っても切れない関係性と、他に救いはないのかをご説明していきます。

統合失調症を患ったことで風俗業界に足を突っ込んでしまった自分

暗闇の中で涙を流す女性のモノクロ写真。

かくいうわたしも、統合失調症の当事者だった独身時代、風俗嬢として働かされていたことがあります。

働かされていたというのは、渋谷の路上で知り合って親しくなっていた風俗スカウトマンに、支離滅裂な言動などから精神障害者だとバレて、障害につけ込まれ都合のいいように使われたからです。

その直前に前科持ちの詐欺師に騙され無一文になっていたわたしは、風俗スカウトマンに「儲かる仕事があるよ」と持ちかけられても、貧困という事情から断ることができませんでした。

いえ、もっと正直に心情を告白すると「まさか精神障害者である自分を、あまりに酷い目に遭わせるような悪い人ばかりではないだろう」と考えたのです。

世間知らずのうえに、正常な判断能力も失っていたわたし…。

この世の中には、精神障害者の傷ついた心につけ込んで酷い目に遭わせても平気な顔をして生きていける極悪人が、たくさんいます。

特に女性は、わたしのように「売られる」こともあるので、じゅうぶんに気をつけてくださいね。

そしてもっと悪いことに、止めてくれるような分別を持ち合わせた親切な友人たちは、統合失調症によって引き起こされる異常行動により、他人に迷惑しかかけないわたしのもとから離れていっていました。

風俗スカウトマンといえど、知人のひとりともいえます。「この人の頼みを断ったらまた嫌われてしまう、離れていかれてしまう」そんな危機感と被害妄想も手伝って、わたしは風俗嬢として働き始めざるをえませんでした。

風俗が病状の悪化、自己肯定感低下につながることに

窓辺に座り、膝を抱え込む女性のモノクロ写真。

誤解を招くといけないので注記しておきますが、誇りとやりがいを持って風俗嬢として働いている女性がおかしいと言っているわけではありませんよ。

ひとつの仕事として、プライドを持って風俗嬢をされている人もいます。ただただ尊敬のひと言です。

ただ、わたしには風俗嬢は合っていませんでした。

自分は汚れてしまった、もう何の価値もない、そんなマイナス思考に陥って統合失調症の病状は悪化の一途。

精神科に行くたびにどんどん薬が追加されます。主治医に対しても恥ずかしくて、風俗で働いていることはどうしても打ち明けられませんでした。

そのうち風俗の仕事でのストレスのあまり、シャンプーをしたりブラッシングしたりするだけで、ごっそりと大量の髪の毛が抜けるようになるのです。気づいたころには、わたしの頭頂部はスカスカの薄毛になっていました。

アルコール依存症にもなり、いつもバッグにウイスキーの小瓶を忍ばせて、仕事の合間に隠れてトイレであおっていたのです。

もう、むちゃくちゃな状態ですよね…。

精神障害者の女性を助けてくれる場所は他にある

暗い背景に、開いた手の上に浮かぶカラフルな光の玉。

結果的に、今の夫と出会えて、わたしは地獄のような生活から救い出してもらえました。

夫と出会えずにあのまま風俗嬢を続けていたら、現在わたしはこの世にはいないでしょう。夫には、心から感謝しています。

精神障害に苦しむ女性の中には、「みんなと同じように、会社勤めや普通のアルバイトができない。お金のためには、もう風俗で働くしかないのかも」などと考えている人もいるかもしれません。

どうか今一度よくよく考えて、踏みとどまってください。

日本では、すべての国民が「健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長する制度」を受ける権利を持っています。生活保護や行政からの支援を受けることも、視野に入れましょう。

わたしは昭和生まれの古い人間なので、一度たりとも生活保護や支援を受けようと思ったことはないです。しかし、上で書いたような過去の状態は「健康で文化的な最低限度の生活」とは、到底いえませんよね?

生活保護や行政からの支援を受けることは決して恥ではなく、日本国民の権利なのです。

若くして精神障害者となってしまったあなた、頼れる人をなくしてしまったあなた。

まずはお近くの役所に行って話を聞くか、行きづらければ下記のようなサポート機関に電話やLINEなどで相談をしてくださいね。

厚生労働省 「こころの健康相談統一ダイヤル」 
0570-064-556
電話をかけた所在地の、公的な相談機関に接続されます。

厚生労働省 「生きづらびっと」 
生きづらびっとLINE 友だち追加
自殺防止の相談を行い、必要に応じて電話や対面による支援や居場所活動などへ繋いでくれます。

特定非営利活動法人 BONDプロジェクト 「10代20代の女性のためのLINE相談」
「10代20代の女の子専用LINE」友だち追加
10代〜20代の女性のためのLINE相談。必要に応じて電話や対面相談、居場所や自立支援をしてくれます。

特定非営利活動法人 「あなたのいばしょ」
あなたのいばしょチャット相談
年齢や性別を問わず、誰でも無料・匿名で利用できる24時間365日受け付けのチャット相談窓口です。

アピールしたい職歴・スキルだけで応募できる!
ABOUT ME
猫とお酒と夫が大好きなフリーライター。自死遺児でPTSDがあり、統合失調症の元当事者。過去には精神障害者手帳2級で長い間ドン底生活を味わったが、優しくて愛にあふれた夫に救われて寛解。かわいい保護猫たちにかこまれ、仕事の他にも地域猫ボランティア活動などをしながら楽しくゆったりと暮らしている。