精神疾患の一つである統合失調症は、脳の病気であると知っていますか?
今回は私が「統合失調症は脳の病気なのだ」と納得した時の話をします。
統合失調症は脳の病気?
精神疾患で知られる統合失調症は、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れることで起こると言われています。
つまり、統合失調症は脳の障害、脳の病気とも言えるのです。
私が初めて統合失調症になった時、それがどういうことなのかよくわかっていませんでした。
自分が病気だとわかっていなくて、聞こえてくる幻聴はなく本当の声だと思っていたし、妄想は妄想ではなく、私にとっては真実だと実感していました。
家族から「それは現実ではないよ」と言われても自分が実感を持っているので納得できず、なぜ幻聴や妄想が起こるのか理解できていませんでした。
病後、数年して症状が落ち着き、病気に関しても知識がついてからは「あの時の声は幻聴だったんだ」「私が体験したことは統合失調症の症状だったんだ」と認識できるようになりました。
一度そのような認識を持った当事者が、再び統合失調症になったらどう感じるのでしょうか?
病識(自分が病気であることを自覚すること)を持ったのだから、再び症状が起きても大丈夫だと思うかもしれません。
私は統合失調症が再発した時、統合失調症は脳の病気だという意味の恐ろしさを知りました。
「わかっているのに……」再発時に思い知った病気の恐ろしさ
再び幻聴や妄想に襲われた時、私は頭の中で「これは幻聴だ」「これは妄想に違いない」と認識できていました。
しかし、頭ではわかっているのに心がコントロールできず、幻聴や妄想の中の出来事に反応してしまうのです。
「これは病気の症状で現実ではない!」と必死に自分に言い聞かせていました。
しかし、現実ではないとわかっているのに、幻聴や妄想に怯えたり、悲しんだり、恐怖で動揺したりして胸がドキドキ苦しくなるのです。
まるで心のハンドルが私ではなく病気に握られて暴走しているかのようです。
「わかっているのに、わからなくなる!」
頭で理解はできていても、心が言うことをきかずに病気の言いなりになってしまいます。
私はこの体験をとても不思議に思いました。
体調が回復した後「統合失調症の発症には、脳の神経伝達物質の異常が関係している」という説を知り納得しました。
脳が非現実を現実と間違えて、不安や恐怖を引き起こす神経伝達をしていたのだと考えるとスッキリ理解できたのです。
病気や障害は自分の意思でコントロールできないのだと、この病気の恐ろしさを理解した瞬間でした。
これはあくまで私の感覚に基づく個人的な体験で、他の人にはあてはまらないかもしれません。
しかし、病識を見失うことは統合失調症の当事者にとっては仕方のない部分があり、コントロールできないものだと伝えたくて書かせて頂きました。
病識を持つには適切な治療や支援が必要
私が初めて病識を持つきっかけになったのは「あなたに聞こえている声は私たちには聞こえていない。」という母の意見から精神科を訪れたことでした。
病識がないというのは当事者にとっても、周りの人間にとっても恐ろしいことです。
しかし、適切な治療や支援を受けることで少しづつ症状が収まり「これは病気の症状なのだ」と本人が自覚を持てる場合があります。
病識が持てるようになると通院や投薬がしやすくなり、病状がさらに改善されます。
統合失調症の正確な原因はまだ解明されていませんが、一人でも多くの当事者が適切な治療や支援が受けられるよう願っています。