生活保護と聞いて、あなたはどんな印象を抱きますか?
「不正受給」「甘えだ」「恥ずかしい」など、どちらかと言うとマイナスのイメージをお持ちの方が多くいらっしゃるかと思います。ましてや、20代で受給するとなると、「働けるはずだ」と思う方が増えると思います。
ですが、生活保護は国民の権利です。確かに、不正受給をしているならず者は残念ながら存在するのが事実ですが、正しく受給している人に対して「税金泥棒だ」という認識は誤っています。
今回は、20代前半にして生活保護を受給した経験を元に、生活保護についてお話させてください。
不運が重なり、生活が困窮
まずは、わたしが生活保護を受けることになった経緯から、お話したいと思います。
生活保護受給に至ったのも、本当にわたしの詰めが甘いが故、という自覚もありますが、タイミングが悪かったという一言に尽きます。
それは、退職を決め、次の職場も知人の紹介でほぼ決まっていたと安心していた矢先のことでした。なんと、今までの疲労がたたり、退職日直前で入院することになってしまいました。
これにより、退職後すぐに控えていた次の職場の面談にも行けなくなってしまい、退院の日を待っていただけるとのことでしたので、治療に専念していました。
ですが、いざ退院すると、別の人に内定が決まったとのこと。お待たせすることになってしまったわたしにも非がありますが、突然のことに目の前が真っ白になりました。
もう、通勤する会社はありません。そうなると、次の転職先を一刻も早く探さなくてはいけなくなりました。
ですが、退院したばかりの弱った身体では、普通の生活を送ることですらやっとで、転職活動をしている余裕は正直ありませんでした。
ハローワークに通うも、難病患者就職サポーター(※1)からは体調が安定するまでは治療に専念した方がいい、とアドバイスを受けました。
しかし、ここでも問題がありました。
貯金があれば、少しはゆとりを持って転職活動ができたと思います。
運が悪いことに、退職の数ヶ月前に一人暮らしのための引っ越しをし、貯金を切り崩してしまっていました。
焦れば焦るほど、泥沼にはまっていくような感覚。
とうとう、貯金は0に等しくなってしまいました。
※1難病患者サポーター:ハローワークにいるサポーターのこと。主に難病患者の就労支援をおこなっている。難病患者は働くことなどについて相談することができる。
まず頼ったのは「仕事・暮らし自立サポートセンター」
なんとかして生活をつないでいく術を探していたわたしは、ネットでこんなものを見つけました。
『仕事・暮らし自立サポートセンター』
わたしの自治体では、「仕事が続かない」「病気で働けない」「家賃が払えず家を追い出されてしまいそう」など、さまざまな悩みに対してアドバイスや支援をおこなっている、仕事・暮らしサポートセンターという公的支援が存在していました。
まずは、藁にもすがるような思いでそこに相談しに行きました。
すると、そこでは病気で働けないことや、一人暮らしを続けたいということを考慮していただき、「生活保護を受けたほうがいい」というアドバイスをいただきました。
また、働きたいという意思があり、一時的に受給するのであれば、なおさら生活保護の審査が通りやすいだろうと言われました。
もし、一人で申請に行くのが不安であれば、生活保護の相談窓口に同行することも可能だと言われ、実際に同席してもらうことにしました。
その日、帰る直前に「貯金額が0に近いのであれば、すぐに申請できる”フードバンク”を利用していくといいよ」と言われたので、その場で申し込みもしました。
フードバンクとは?
自治体により異なると思いますが、わたしの住んでいる自治体には生活困窮者に対し、人生のうち3回まで食料の提供を受けることができるフードバンクというNPO法人が存在しました。
フードバンクでは、捨てられるはずだった食品を、生活困窮者に寄付するというシステムになっています。と言っても、コンビニ弁当の廃棄のようなものではなく、賞味期限が近くなった保存食などが一つのダンボールに詰めて送られてきました。
上手に使えば、ダンボールの中だけで2週間ほどは持つのではないでしょうか。わたしは生活保護の受給が割と早めにスタートしましたので、食費とやりくりしながら一ヶ月ほどで中身を使い切りました。
中には有名なブランドチョコレートなどのおかしなども入っており、貧しいといった気持ちや罪悪感が少しほぐれました。
そんな一つのおかしでさえ、助け合いのこころを感じることができ、泣きながら食べたことを思い出します。
というように、生活が困窮してしまった際に頼ることができるサービスがあるかもしれないので、まずは「〇〇市 生活困窮」というようにとにかく調べてみることです。
生活保護を受ける
そして、生活保護の相談・申請に行くことにしました。
実際に申請に行ってみて思ったことは、まず一人で申請に行くのは非常に勇気のいることだと感じました。中には、本当に生活が困窮しているのにも関わらず、申請を拒否されたという話も聞きます。
そんな時は、まず『仕事・暮らしサポートセンター』のような、暮らしの相談ができる窓口に相談すると良いと思われます。
わたしのケースのように、役所に生活保護の申請に行く際に同行してもらえ、大変心強い存在になると思います。
まず、事情を全部説明し、残高が空になった通帳も見せました。
受給の決め手になったのは、やはりこの2つでした。
- 難病患者で働ける状況でないということ
- 働きたいという意思があること
また、受給にあたり、親族からの支援が可能かどうかも聞かれますし、実際に親へ連絡(※2)もされます。
わたしの場合は、親を頼ることができない事情があったことから、親からもその旨を説明してもらい、受給の審査に入りました。
そして、後日生活保護担当の職員が自宅にやってきます。主に、資産となるものがないかをチェックしに来るわけです。
もちろん金目のものはパソコンぐらいしかなく、それを取られてしまったら商売道具がなくなるので、そのことも説明しました(持ち家や車・貯金などがあると、審査が通りにくくなります)。
まだ家具が揃っていない殺風景の部屋を見て、職員が苦笑いしていたことを思い出します。
こうして、生活保護受給へのステップがほぼ完了したという形です。
数日後、審査が通ったとの連絡があり、役所にお金を受け取りに行きました。
経済的余裕ができると、こんなにも安心するのだと強く実感しました。
※2:事情があり親族への扶養照会(支援が可能か否かの確認)を希望しない場合は、届出により拒否することもできます。
生活保護を受給して感じたこと
それからは、生活保護から脱却するために就活を頑張りました。やはり、旅行などに行くことができず、贅沢な暮らしははばかられるからです。
友達と遊びに行くのですら罪悪感。ある意味、そういった面ではストレスだったかもしれません。
そうしている内に無事に就職することができ、生きていくために十分なお金を得ることになってからは受給が打ち切りになりました。
確かに、生活保護を受けるには数々の手続きが必要になりますし、受給中も制約が発生してしまいます。ですが、生きていくためには、受け取っていい国民の権利なのです。
資産・プライドか、生きること。この2つを天秤にかけ、どちらを取るかはあなた次第ですが、少なくともわたしは生活保護を受けることにより、生活の立て直しを図ることができました。
もし、あなたが生活に困っているのであれば、まずは生活困窮者が相談できる窓口に相談してみましょう。きっと今の暮らしを良くするアドバイスをしてもらえると思います。
そして、生活保護を受ける場合も一時的にお世話になる、という考えで利用することで、生活を立て直すことができます(長期的な受給はストレスになることから、あまりオススメはしません)。
生活保護は国民の税金から成り立っていますが、過度に罪悪感を覚える必要はありません。困った時はお互いさまです。ありがたく力をお借りましょうね。
この記事が、生活保護の受給を迷っていた人や生活が困窮していた人の、解決の糸口になれば幸いです。