障害を補助する道具。
私も毎日、色々なものを使いこなして生活をしています。
その道具の1つ、歩くときに使用するのが片杖です。
片杖を使うまでの経緯や、使うことで得た『気付き』を私なりに言語化してみますね。
はじめに
街中で杖を使っている人、見かけたことありますか?
たぶん一度は、ありますよね。
ではその方は「なぜ使っているか」と考えたことは?
この疑問には、NOと答える方が多いかと思います。
考えたとしても、足が悪いのだろう、と思うだけ。
確かに足が悪いから、という理由もあります。
ただその理由は、もっと複雑な場合も多いことも。
杖を使っている人ってどんな人?
このコラムの執筆時、私は32歳ですが、杖の使用者の中でも若い人の部類に入るはず。
しかも私が使っているのは、「ロフストランドクラッチ」という、腕部分に輪っかのあるものです。
若い人だし、ちょっとケガでもしたのかな?と思いますよね。
もちろん私の病気は、パッと見ただけではわかりません。その疑問も、当然だと思っています。
杖を使っていることで、よくあるのが電車での声かけ。
「ここの席、どうぞ~」
優しい方なら、気付いてスグに声を掛けてくれます。とっても、ありがたいことです。
ただし私は、ほとんどの場合、お断りをします。理由はシンプルで、座ったら1人で立ち上がれないから。
私自身は、全身の筋力が弱い病気です。そのため椅子から立ち上がるために必要な、手や足、お尻等の筋力も弱い。
今の日常生活の中でも、机のように思い切り身体を預けるものが必要です。私は腕の筋力も弱いため、電車の手すり程度では、立ち上がることができません。
そのため本当に感謝の気持ちで一杯ですが、お断りします。なるべく笑顔で、感謝も添えて。
もちろん、詳しい事情なんて、お話はしません。ただただ感謝を笑顔で伝えるだけ。
言葉と表情には、私なりの想いもこめています。
これを嫌な思い出にしないで欲しい。声なんてかけなければ・・・と思ってほしくない。優しい声かけは、広がって欲しい。
あくまで私だけの特別な事情があって、お断りをしただけで、他の方にはありがたい申し出になるかもしれない。その大切な機会を奪いたくない、勇気のある声かけを次もしてほしいと、思っています。
そして杖を使うことに、色々な理由があることを知って欲しい、とも。
実は杖を使い始めたのは、最近のこと
「足元が不安定だから杖を使う」は事実ですが、更に奥深く人それぞれの理由があります。私自身も杖を使うようになったのは、20歳を超えてから。
足を骨折した時に「動かせない時間」があったことで、前より筋力の衰えが進み、また関節が硬くなりました。その分、歩行が不安定になったことで、補助的に利用しています。
骨折の前から人と比べれば歩くのも遅い、少しフラフラと歩き方が違う、と病気ゆえの症状はありました。ただ比較的、軽い部類だったので、よ~く歩く姿を見れば気付く程度です。
それこそ電車で「席をどうぞ」と、声かけをされた記憶は、ほとんどありません。
その経験があるからこそ、杖を使うことで葛藤があったことも事実です。やはりパッと見てわかる、は良い面も悪い面も。
私自身は少しぶつかるだけで転倒のリスクもあるので、杖が良い目印になります。また転んでも、最初から足が悪い人だ、と認識してもらえることで、その後の対応が変わったことも増えました。
その反面、若い人が杖を使っているからなのか、よく周りの視線を感じるようになりました。大人でも気になる方は、じーっと見てきますし、ご年配の方には「大変ねぇ」なんて言われることも。
さらに子供だと、本当にわかりやすい!保育園等のお散歩に出会えば、全員で凝視されることも多いです。
何となく物事がわかる年齢になると、疑問がわくのだろうな、と微笑ましい気持ちで見ています(笑)
車椅子も時には使う
普段の日常生活では、外出時に杖を使っていますが、ときどき車椅子も利用しています。
私は筋力が弱いため、人よりも疲れやすく、長距離を歩くことが一苦労。
あと単純に歩くスピードが遅いので、サクサクと行動が出来ないことも理由です。では長距離って、どれくらいかと言うと・・・
広いショッピングモールやアウトレット、テーマパーク系は、ほとんど利用しています。特にディズニーランドで1日遊ぶなんて、必須です(笑)
車椅子を使う時は、現地で借りるときもあれば、自前のものを持っていくことも。といっても、自前は簡単に折り畳みが出来る、シンプルなもの。
よくホームセンターやネットで、簡単に買えちゃうものです。それでも長距離の移動が難しい私には、ちょっとした相棒。
そしてこれも驚かれますが、車椅子を使っているのに、立てるし歩いてる!と。
杖を使うことも、車椅子を使うことも。私にとっては、使い分けの理由があって、当たり前のように使っています。
ただ周りから、驚かれることがあることも事実。
だからこそ、まずは知ってください。
杖を使うことも、車椅子を使うことも、人それぞれの理由があることを。
杖を使う=足が悪いだけではないことを。
車椅子=歩けない、は違うことを。
知るだけで視野が広がり、優しい世界に繋がることを。
人それぞれだからこそ、次も気軽に声をかけて
杖を使うことも、車椅子を使うことも。それぞれの理由があり、細かく使い分けることで、何とか日々の生活が成り立つこともあります。
まずはその事実を、知って欲しいと思っています。
そして声かけは、もし断られたとしても、次もして欲しいというのが切なる願いです。
断る人は、たまたまその人にとって、不要かもしれない。でも全員が不要か、は別問題です。
障害者にも色々なタイプがあり、声かけした内容が求めている手助けかは、なかなか難しいマッチング。
それでも「優しい声かけ」があるからこそ、「手助けを求められる」のも事実です。
このコラムで少しでも、優しさの波が起こることを願います。