視覚障碍者の趣味と聞いてパッと思いつかない方がいらっしゃるかもしれません。今回は私自身の趣味を紹介しながら、どのように工夫して楽しんでいるかについて書いていきます。
はじめに
私は全盲の視覚障碍者です。10歳までは少し視力がある弱視でしたが、その後全盲になって現在に至ります。
視覚障碍者の趣味と聞いてパッと思いつかない方も多いかと思います。たとえば、読書にしても点字を読むことができない人だったらどのように作品を楽しむのか疑問を抱かれるかもしれません。
今回は、私自身の趣味のことを紹介しながら、どのように工夫して楽しんでいるかについて書いていきます。
デジタル機器は、音声ガイドで操作
全盲である私は、音声ガイドを使いながらスマホやパソコンといったデジタル機器の操作をしています。
音声ガイドの他には、入力方法も重要です。平面的な画面を触って操作するタッチパネル式だと、指が少しずれるだけでちがう文字を入力してしまいます。
そのため、手で触れる物理的なボタンで操作できるかどうかもチェックポイントです。タッチパネルの操作も、スマートフォンの画面読み上げ機能のように操作できるとありがたいのですが。
母に聞いた話ですが、私が子供のころ家にあった電卓を楽しそうにいじっていたらしく、適当に数字を入力してクリアボタンを押して、全部0になったのを見て喜んでいたようです。子供のころの電卓遊びが、現在の仕事に繋がっているのかもしれません。
スポーツは、聴力と想像力を働かせる
最近は仕事優先の生活になっていてなかなか自分がスポーツをする時間はとれていないのですが、私は学生のころからさまざまな競技を行ってきました。
これまで私が行ってきたスポーツは球技が中心でした。視覚障碍者向けのサッカーであるゴールボールや、卓球のサウンドテーブルテニスはボールが転がると音が鳴るようになっています。その音を頼りにするのです。私は最近まで視覚障碍者向けの卓球をやっていました。
このように、視覚障碍者向けのスポーツは、聴覚と想像力を組み合わせて楽しみます。実際の体の動きと想像がマッチして、うまくいったときのうれしさはたまらないものです。
私は自分がスポーツをするだけでなく、スポーツ観戦も大好きです。アナウンサーの実況を聞きながら、頭の中でプレイ内容を想像して楽しんでいます。
読書は点字と録音図書で楽しむ
私は弱視だった子供のころ、活字を読むのはかなり困難でしたが、絵本をよく買ってもらい絵のみを楽しんでいました。
全盲になった今は、点字か録音された図書で読書を楽しんでいます。特に、専門的なジャンルは、点字で読むようにしています。
私の場合、録音図書だと何度も聴き直さなければならなくなってしまい、集中力がなくなってしまうのです。点字だと、一文字ずつゆっくりとなぞり、思考を深めていくことができます。
録音図書では、小説やエッセイなどの文学作品を楽しむようにしています。図書の点訳または音訳を行っておられるボランティアの皆様には感謝の思いで一杯です。
これからチャレンジしてみたい趣味
私は、これから趣味としてやってみたいことが二つあります。それは、和太鼓と陶芸です。
一つ目は和太鼓です。私は、中高の6年間、学校で和太鼓をやっていました。盲学校の授業の必修クラブという時間の中でいくつかの項目の中から選択してプロの先生から教えていただいていました。
ちょうど思春期で何かともやもやした日が多かったので、このクラブを選択して良かったと思いました。バチを振り上げて太鼓の面に叩き込むときの気持ちよさはなんとも言えず格別です。お腹まで音が響き渡り、爽快な気分になります。
ラジオで、和太鼓講演のお知らせなどを耳にすると、血が沸き立つような感じがして再開したいなと思います。体力との相談となりますが、再び楽しんでみたい趣味のうちの一つです。
二つ目は陶芸です。中学生の美術の時間に陶芸をしましたが、粘土を触っていると気持ちが落ち着くので、好きな時間でした。
ただの土の塊から、作品が出来上がったときの達成感は心地よいものです。将来、陶芸をする時間を作って趣味として楽しめたらと思っています。
まとめ
趣味にいそしんでいる時間は、大変幸せなひとときです。日頃のもやもやなどからくるストレスの解消になります。
先ほど、再びチャレンジしたい趣味として和太鼓をあげましたが、学生のころは盲学校という枠組みの中でやっていたため安心感がありました。
しかし、今度和太鼓を行うということになると、健常者中心のグループに入ったとき、どのように配慮を求めて行ったらよいかということ、また、門前払いされた場合のことを考えると不安が生まれてきてしまいます。
これからは、多種に渡る趣味について障害などと関係なくどのようにしたら楽しめるかいろいろな人たちと出会った際に話していけたらと考えています。