発達障害の人には隠れた才能があるのか

スーツを着た男性が椅子に座り、考え込んでいる様子。

自分が発達障害と向き合う中で、何度か耳にしたことのある、「発達障害者は並外れた能力や才能を持っている」類いの話し。

今回はこの才能というものについて考えてみる。

才能に対する幻想と現実のギャップ

以前に書いたコラム『発達障害でも活躍している人』でも、発達障害でありながら活躍している芸能人や経営者や芸術家の存在に触れた。

確かに発達障害を抱えていても、芸能や芸術、文化だったり、経営・ビジネスにおいて類いまれなる才能で活躍している人もいる。

だけど、膨大な発達障害当事者の中でごく僅かな成功者を引き合いに出されても、再現性に乏しいレアケースではないのかと、そんなエピソードを一歩引いた目で見てしまう。

発達障害の関連本を書店で手に取った8年前の僕としては、仕事がやらかし続きで藁にもすがる気持ちだったのに、ごく一部の有名人の話をされても、なんだか神経を逆撫でられたようだった。

白い背景に散らばったパズルのピース。

「学校(職場)では目立たなく、パッとしない私だけど、○○○になった途端に自分の秘めた才能が解き放たれ、私を見る周囲の目は大きく変わる…」

そんな逆転劇の主人公に自分をキャスティングしたくなる。

きっと、そんな日が来るはず。
いや、きっと来る。
来ないとおかしい!
そうじゃなきゃ、この人生割りに合わない!!

才能によって、お金や名声を集めて、自己肯定感や承認欲求を満たされたい!!

…でも、ほとんどの人の人生において、そんな日は来ない。

そして、世の中で持て囃される様な才能が自分には無いから、「俺なんて…」「私なんて…」「この子は…」って、思い詰めてしまうのも無理はない。

才能の価値を他者の評価で決めない

卓上に置かれた手帳、ペン、スマートフォン、メガネ、そしてクリップ。

自分の才能って、何だろう?と考えたとして、
すべての才能に【役に立つ・立たない】、【意味のある・なし】といった他者からの評価だけで判断しだすと辛すぎる。

たとえば、ここに一人、才能について思い悩む人がいるとする。

彼には絵心や音感も無いし、勉強もからっきし、味覚も平凡、運動音痴でたいして面白いことも言えない。

特別な才能なんて、ない。ない。ない…。

あった!

直近30年間のプロ野球ドラフト会議で指名された選手の名前と経歴についてなら、即座に答えられる!

これに関しては、誰にも負けないよ!と彼が主張したとする。

それに対して、
「それは何の役に立つの?」
「知っていて、何か得する事でもあるの?」
周りの人からは、そんな風に言われるかもしれない。

自分の才能が分かったとしても、それが世間にとって、あまり役に立たない才能だったとしたら、本当に全く意味がないことなのだろうか?

プログラミングの技術書や六法全書をパラパラ見ただけでスラスラ覚えられる才能は持て囃されても、

「ファックスの動作音を聞いただけでメーカーと機種をすかさず当てられる才能があります!」とか、

「戦隊ヒーローのキャラクター名鑑の内容を丸暗記できていて、プロフィールから必殺技までスラスラ覚えられる才能があります!」

はあまり意味がないってことになるのか?

いや、まったくそんな訳はないと思う。

才能がお金に繋がらなくても幸せになれる

「SEE THE GOOD」と書かれたマグカップを持つ人。

そりゃ、自分の才能を活かして、全く苦にならずに高収入や周囲から称賛を得ることが出来れば、確かにハッピーかもしれない。

でも、その才能がお金に繋がらないとしても、自分の人生の生き甲斐や趣味やリフレッシュの創出において大切なものになる。

だから、多くの人の役に立たなかったり、お金に繋がらない様な才能だったとしても、落胆しないで欲しい。

先ほどのプロ野球ドラフト会議30年分を暗記している才能の持ち主の例え話に戻る。

一昨年のドラフト会議で6位で指名されたあの選手はめでたく今シーズンで一軍デビューか!高校時代は甲子園に縁が無くて、全国的な知名度は無いけれど、あのマウンドでの度胸と豪速球があれば一軍定着だって夢じゃないな!

おっ!10年前にドラフト会議で4位で指名されたあの選手は今年も一軍帯同で今やチームの顔になってるなー!

3年前のドラフト2位で入団したあの選手、ケガで志半ばでの引退かー、第二の人生こそは大活躍してほしいなー!

解説者でも、記者でも、球団職員でもない。野球とは一切関係ない職種で働いている。

でも、いいんだ。それが自分にとって楽しいし、励みになっている。

才能によって、心の拠り所を見つけられただけでも十分喜ばしいことだと思う。

即答できる才能が無くても大丈夫

で、ここまで書いてきて、自分の才能って何かな?と考えてみた。

文章を書く、書き続ける才能??

さすがにおこがましい。
どうにかこうにか1回1回のコラムを書いているので、そこまで胸を張れるものでもないかな?

そう、即答できる自分の才能が無くてもいいのだ。これといった才能が特にない障害者がいても。

それは別に悪いことじゃないし、絶望しないで欲しい。

「特別な才能が無くても、あるがままのあなたはサイコーで素晴らしい!!」
なんて無責任なポジティブ論で終わらせるつもりもない。

でも、無理に才能を追い求めたり、絶望しない。

「割った玉子の黄身が双子だった!」と同じくらいのラッキー。
「今まで気づかなかったけど、これって才能かも?」ぐらいの心持ちでいたいかな。

アピールしたい職歴・スキルだけで応募できる!
ABOUT ME
1989年生まれの33歳、生粋の岐阜県民。社会人2年目の時に発達障害(ADHD/ASD)と診断され、障害者雇用にて再就職。8年間勤務後、障害者の就労支援職に従事している。2019年に居場所作りや情報共有の場として岐阜市にて発達障害当事者会「発達ワークスぎふ」を立ち上げ、私生活では二児の父として、色々しくじりながらも奮闘中!!