デリケートな疑問だからこそ、性の話は当事者にもなかなか聞きづらいもの。しかし、必要な性の知識を知ることは、自分を守りながら生きることに繋がる。
今回は私自身の経験を踏まえて、意外と悩む方も多い“先天性心疾患者の性行為”について必要な配慮や気をつけたいポイントなどをお伝えしたい。
先天性心疾患者も性行為はできるの?
まず、私が先天性心疾患者の性についての記事を書こうと思ったのは、先天性心疾患の子を持つ親御さんから「激しい運動は避けたほうがいいと聞いたので将来、性行為はできないのか不安なのですが、どうですか?」と、とても聞きづらそうに尋ねられたからだ。
性に関する話題はデリケートであるため、語りにくく、聞きづらい。ネットでも情報が得られにくいため、ひとりで悩んでしまうこともある。そういう人に私の体験談がひとつの声として届いたら嬉しいと思う。
私の場合は、性行為中に苦しさや辛さを感じたことはない。胸にある大きな傷や管を抜いた跡が相手にどう見えるか、引かれないだろうかと不安にはなったけれど、ごく普通の性行為であれば、体力的に負担を感じなかった。
ただ、それは私が女性であることも大きいとは思う。一般的に、女性は男性よりも体を動かさないことが多いからだ。
性行為をする時、男性は女性よりも体力を消耗しやすい傾向にあると思う。だからこそ、男性も性行為の前にはあらかじめパートナーに持病のことを伝え、感じる可能性がある不安を共有しておくことが大切だ。
性行為の前にパートナーに話しておきたいこと
①持病の説明
②気になる方は「手術跡について何も言わないで」などの心理的配慮をお願いする
③過去に経験した“体力的に難しいプレイ”などがあれば共有する
④体力的に性行為を続けるのが難しくなった場合の対処法について話し合っておく
こんな風に事前の話し合いができていれば、過度に無理をしない性行為ができ、休憩が欲しくなった時も気まずいムードになりにくい。誤解を生み、大好きな人との仲がギスギズしてしまうのは避けたい…と思う方は、意識してみてほしい。
性行為の時に気をつけたいポイント
【男女共通】
・十分な休憩を取れるよう、余裕を持って性行為に挑む
・長時間になる場合は、間に十分な休憩を挟む
・室温を調節して冷えなどで体調を崩さないように心がける
・心拍音が早くなってきたら、パートナーに伝えて無理をしない
・性行為後は、ベッドで休んで休憩する
・階段の上り下りが難しい、血液中の酸素量を表すSpO2が90%以下の場合は念のため、かかりつけ医に相談。相談しにくい場合は、動悸が激しくならない範囲の性行為を心がける。
・体力的に難しいと思える過激な性行為は避ける
【男性編】
・体力的に無理な動きは避ける
・複数回行う時は、適度な休憩をしっかりと挟む
・動く時は「ゆっくり」を意識する
・性行為に関係のある薬を使用する時は、必ずかかりつけ医に相談する
【女性編】
・相手からの要望に応えようと無理をしない
・息切れや動悸が激しくなった時には「ストップ」という勇気を持つ
・子どもを望む場合は妊娠が可能かどうか、あらかじめかかりつけ医に確認する
・自分の体を守るためにも避妊をして、望まない妊娠を避ける
先天性心疾患の症状や重症度には個人差があるので、自分が無理しすぎない性行為の形をパートナーと一緒に見つけていってほしい。
もしもの時に体を守る「STOPサイン」を決めておこう
先天性心疾患の中には、日によって体調が大きく変わる方もいる。1日の中でコンディションが変わっていくこともあり、そういう時はいつもと同じ性行為でも体力的に苦しさを感じてしまう。
そんな時、相手を傷つけずに自分の体を守れるよう、パートナーと話し合って性行為中の「STOPサイン」を決めておくのもおすすめだ。
デリケートな時間だからこそ、性行為中は相手を思って「辛い」という言葉を飲み込んでしまうこともあるし、相手やムードによっては「やめて」という否定の言葉がそのままの意味で伝わらなかったりすることもある。
そうした時に我慢をしすぎないよう、「手を上に挙げる」「ベッドを3回叩く」など、お互いが本心に気づけるSTOPサインを決めておくと自分を守ることに繋がる。こうしたボディーランゲージなら言葉で言えない気持ちも伝えやすいのではないだろうか。
「愛する人と触れ合いたい」という気持ちは、恥じなくてもいい自然な欲求。パートナーと話し合い、自分たちなりの工夫を重ねながら、無理しすぎずに大切な欲求を満たす方法を見つけてほしい。