わたしは結婚して長く経ちますが、子どもはいません。
統合失調症によって、長年にわたり大量の服薬をしていたことと精神状態が悪いということで、若いころから子どもを持つことを諦めていました。
夫はとても子ども好きな人です。だからといって、わたしたち夫婦の仲に亀裂が入ったことは一度もありませんでした。
子ども以外に、ちゃんと「かすがい」があるからです。
子どもが産める女友達から暴言を吐かれたことも
わたしは見た目が地味なほうではないので、当たり前のように子どもがいないと判断されるのか、新しく知り合った人から「お子さんは?」などと訊かれたことがないのはラッキーです。
いちいち「いないんです。理由は精神疾患があって…」などと説明をせずにすみます。
しかし多様性の世の中とはいえ、まだまだ結婚したら子どもを産むのが普通だ!という考え方は根強いようですね。
仲が良いと思っていた女友達が妊娠したとき、突然「子どもが産めないなんて可哀想だよね」とマウントを取られたことがあります。わたしが統合失調症だということも、よく知っている友達からです。
もちろんその場で縁を切り、今に至るまで連絡を取っていません。
ショックよりも何よりも、そんなことを言える人間性の人と、友達でいる理由はないですから。
主治医にも子どもを持つことを止められる
わたしは結婚したばかりのころ、精神科の主治医に子どもを持つことについて訊ねたことがあります。
きっかけは、甥っ子を肩車してかわいがっている夫の姿を見たから。夫は本心では、子どもが欲しいんだろうなと思ったのです。
ある日の診察で、いつものように問診が終わりました。帰り際にふと思い出したふうを装ってふり返り、思い切ってこう言ったのです。
「先生、わたしって子どもは産めるんでしょうか?」
主治医の反応は、意外なものでした。天井をあおいで、はっはっはと爆笑したのです。
「何言ってるの、子ども?おかしなことを考えるのはやめておきなさいよ」
わたしも「あはは〜。そうですよね」と笑って診察室をあとにしました。当時、十数種類もの薬を飲んでいたのだから、当たり前ですよね。
おっと、名誉のために書いておきますが、わたしの主治医はベテランで名医と評判の精神科医です。信頼関係もあり、決して馬鹿にされたわけではありません。
保護をした子猫が夫婦のかすがいとなった
そのあとくらいに、わたしは自宅の敷地内で5匹の弱った子猫を発見するのです。
複数匹の保護猫と暮らしているわたしは放っておけず、すぐに捕獲をしてママ猫はTNR(避妊手術をして元の場所に返すという地域猫活動)し、子猫たちは里親さんが見つかるまで預かりボランティアをすることになりました。
ひどい猫風邪をひいていた、5匹もの小さな子猫たちに毎日薬を飲ませたり目薬をさしたりするのはとても大変でしたが、夫との連係プレーで乗り切ります。
そのうちの1匹はかなり弱り切っていて、体重も一番軽くガリガリでした。「正直、この子だけは諦めなければならないかもしれない…」と思ったほどです。
しかしわたしは懸命に離乳食を作り、頑張って与え続けました。そのうち離乳食を食べてくれるようになったその子は、「ああーん、うわーん」と、まるで人間の赤ちゃんのような声で鳴きながら寄ってくるようになったのです。
夫はその鳴き声を面白がって溺愛するようになり、他の4匹に里親さんが見つかっても、その子だけは引き取ろうとふたりで決めました。あだ名は「あかちゃん」。
「百花と猫たちがいてくれるから、俺は本当に幸せ者だなあ」
子猫を抱っこしながら、夫がニコニコ笑って言ったのが印象的です。
そのガリガリの子猫は、今ではうちの猫たちの間でもでもトップクラスの体重を誇る、食いしん坊なおデブ猫へと成長を遂げました(笑)鳴き声は、赤ちゃんのままです。
夫婦仲がいいのが一番大切なこと
わたしは別に真面目な性格ではなく、結婚するまでは貧困により風俗嬢として働いていたこともあります。
オープンマリッジやセカンドパートナーなどという言葉がもてはやされ、子どもがいるのに不倫する夫婦があふれている現代。
でも、今のわたしは夫以外の人に異性としては興味が湧きません。夫もそれは同じです。子どもがいる夫婦よりも、よっぽど固い絆があると思っています。
このまま猫たちと一緒に、夫婦仲良く平穏に年齢を重ねていくのでしょう。
家族の形って、それぞれですよね。子どもがいなくても、かすがいはできて、幸せにもなれるのです。