採用担当者、受け入れ部署の上長、役員など障がい者雇用に携わる、関心がある方々が集う障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)が2023年11月15日セミナーを開催。ブックオフグループホールディングス株式会社の特例子会社ビーアシスト株式会社から業務推進部長 大西 美香(おおにしみか)さん、人財開発部長 深水 清志(ふかみずきよし)をゲストに障がい者雇用の取り組みについて事例を共有いただきました。
はじめに
障がい者雇用特化型の求人サイト「パラちゃんねる」2022年1月に障がい者雇用特化型の求人サイト「パラちゃんねる」をオープンして1年以上が経ち、これまで3000社を超える採用担当者と対話を繰り返してきました。
- 障がい者雇用のはじめ方がわからない
- 業務の切り出し、受け入れ部署の開拓ができない
- 相談する場所がない
- 新卒採用と兼業で手が回らない
- トップが障がい者雇用にネガティブである etc
障がい者雇用担当者は、役員と現場の狭間で理想と現実のギャップに日々悪戦苦闘しています。教育課程での構造的分断がある日本においては「働く」を通じた共生社会の実現が求められ、旗振り役となる障がい者雇用担当の積極的な社内活動が必要不可欠です。
そこで、私たちは、障がい者雇用担当を後押しするチームとしてコミュニティを形成し、
職場での雇用促進に向けて全面的にサポートすることとしました。
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)には、既に40社を超える障がい者雇用担当者が集い、互いの悩みや課題を共有し、障がい者雇用のあるべき姿を模索し続けています。
今回は、FLAT(ふらっと)主催セミナーについての活動レポートをお届けします。
『BOOKOFF SUPER BAZAAR』店舗併設型の障がい者雇用の取り組み
≪ビーアシスト株式会社の会社概要≫
事業内容:ブックオフグループホールディングス株式会社の特例子会社としてグループ会社の業務支援事業、障がい者支援事業、コンサルティング事業
設立:2010年10月
所在地:神奈川県相模原市南区古淵2-14-20
従業員数:116人
ブックオフグループホールディングスの特例子会社として店舗併設型を主軸に障がい者雇用を実践されていますが、具体的にどのような仕組みがあるのでしょうか?
深水清志
現在は、本やDVD、その他アパレルやスポーツ用品など全てを取り扱うBOOKOFF SUPER BAZAARと呼ばれる店舗にて事業所を併設しており、各事業所に20名前後のパートナースタッフを雇用して店舗業務を中心に業務請負をしています。また、店舗以外にも在庫商品を置く大型倉庫にも事業所を構えており、ブックオフのECサイトであるブックオフオンラインの業務を請け負っています。
小売業・サービス業における店舗併設型の取り組みは珍しいように感じています。そもそも店舗併設型を中心とした特例子会社が設立されて背景を教えていただけますか?
深水清志
当初はブックオフ本体での障がい者雇用における法定雇用率達成を目指し取り組んでおりましが、小売業という特性上、新規出店や子会社の合併など変化が激しく、その度に従業員数の振れ幅を伴い採用が追い付かないという現状がありました。また、併せて店長の異動など安定的なサポート体制を提供し続けることも難しく、特例子会社による集中雇用に舵を切ったという経緯があります。当初はオンライン業務の請負として倉庫併設型として事業所が開設されました。その後、店舗で販売されるトレーディングカードのパック作りを担当するようになったのをきっかけに店舗併設型へ移行したことで、本や洋服など担当する商材も徐々に増え、店舗の評価も好評だったために店舗併設側が主軸となりました。
店舗併設型にしたことで得られたメリットは何がありますか?
深水清志
一番のメリットは業務が多種多様にあるということだと思います。店舗との信頼関係があれば業務量に困る場面はありません。また、携わった商品が店舗に陳列されることで貢献実感や責任感に繋がりやすく、店長や店舗スタッフ、お客様からも感謝の言葉を直接もらう機会もあるため、働き甲斐や自己肯定感にも繋がっていると感じます。実際に売り上げにも貢献しています。常に本体のコア業務をやるということにこだわりを持っており、店舗スタッフと同様の仕事をすることが前提です。業務の難易度が高ければ工程を分解して請け負える範囲で対応しており、店舗スタッフからも戦力として見てもらえていると思います。
特例子会社としての手厚いサポート体制によるグループ本体への売上貢献を果たす仕組みは全国でも事例共有したいところですね。一方で、現状、抱える課題はあるのでしょうか?
深水清志
人事制度は課題と考えています。時給制から月給制へのキャリアアップ制度は設けているものの未だ適用者はいないのが現状です。また、実際に時給制から月給制へ移行された後の就業規則の適用内容や範囲についても働きやすい環境を目指すうえでは課題があるのかなと思っています。ブックオフホールディングスの就業規則をどこまで適用するかなど検討する必要性を感じています。
大西美香
障がい者雇用の法定雇用率の増加に合わせた雇用確保にも課題があります。店舗併設型の事業所の場合、一拠点で数百名を採用できるという仕組みではないため事業所数を増やしていく必要があります。また、今後は精神障がい・発達障がいと雇用範囲を広げていくことを想定した時の業務の切り出しについても同時に検討しなければなりません。
セミナー参加者とのQ&Aセッション
Q.AI技術により障がい者が担う業務も高度化しており、現状の業務と障がい者のミスマッチに苦戦していますが、大手企業はどんな課題を抱えているのか教えてください。
大西美香
店舗ではなく本社オフィスにおいては、ペーパーレスの影響が出ています。紙を扱う業務が以前より加速度的に縮小していくことは予測できるので、今後どうしていくべきか苦慮しています。現状では法律上で保存が必要な書面も多く、まずは第一段として紙からデータへ移行する過程の中で新たな業務を検討して行くことになると思っています。一方で店舗ではAI化やペーパーレスの影響は考えづらく、業務に関して困ることはないのではと考えています。
Q.店舗配属を検討していますが、役員はじめ社内の理解が得られないのが現状です。何から始めれば良いかアドバイスはありますか?
深水清志
当初、法定雇用率の不足分に対して納付金があることが全社的に把握されていませんでした。まずは企業名公表のリスクや年間の納付金額など現状をトップに認識してもらい、トップダウンで役員との合意形成を図ることから始まると思います。その次に統括エリアマネージャーなどの管理職への理解浸透となりますが、私たちの場合は日本理化学工業が“ガイアの夜明け”で紹介されたDVDを見せ、成功するためのイメージ共有を行いました。また、社会的制裁として企業名公表の可能性も伝え、社会的責任としての理解を得たうえで、現場への説明と順に丁寧に進めていったのを覚えています。現場の説明においても見学や体験実習などの仕組みの説明や「全てにおいてサポートします」と安心感が持てるような対話を心がけていました。
中塚翔大
社長からのトップダウンがあったとしても現場の理解が得られず、採用活動まで進まないというケースも多いように思いますが、店舗との協力体制はどのように築いたのでしょうか?
深水清志
採用を実施する店舗の選定は統括マネージャーに選定してもらい、その上で私たちが社内における就労支援センターのようなポジションとして全面的にサポートしてスタートしたことが信頼獲得に繋がったようにも思います。
Q.店舗での障がい者雇用に取り組む場合、消費者とのトラブルが懸念点として上がりますが、実際のトラブル事例があれば教えてください。
深水清志
バックヤードでの業務が主になりますので、滅多にありませんが、確かに接客対応が良くないということでお叱りを受けたことはあります。ただ、サポートするメンバーが周囲におりますので、店舗スタッフがすぐに対応することで充分に補えていると考えています。
Q.13年間と長い間、障がい者雇用を継続して取り組んでいることを踏まえ、これから障がい者雇用を始める会社に何から始めるべきかアドバイスをいただけないでしょうか?
深水清志
現場では土日出勤や朝晩・遅番などの各種条件から採用難が顕著になってきています。そのため、障がいのみならず、国籍やひとり親世帯だったり、何かしらの配慮が必要な人の戦力化を目指していくことが未来戦略に繋がっていくと個人的には考えています。
大西美香
同一業種や規模が近しい企業の人事担当者と積極的にコミュニケーションを取るというのは大切な気がします。とくに特例子会社は狭い世界なので業種に関係なくざっくばらんに話を聞かせてくれる会社も多くありますし、情報収集がとても大事な世界だなって感じています。
セミナー参加者のアンケート結果
■セミナー満足度
良かった:100.0%
- パラスポーツの普及促進とともにパラアスリートの雇用促進について、地元企業と連携出来る可能性や知見を深めていければと思っています。
- 実店舗や実際の商品をもつ業態だと扱うものが目に見えるので働くメンバーにとっても 自分の業務がどのように役立っているかというのがよく理解できるという点が印象的でした。
- 人事制度などもお聞きできて参考になりました。いくつか選択肢を提示できるようにする、というのは良さそうだなと感じました。
- 精神障害の方向けにどのように業務を作っていくか、という点は弊社も苦労しているので他社様も似たようなお悩みを持たれていることがしれたので参考になりました。
障がい者雇用担当と言っても知識・経験が最初からあるわけではなく、ノウハウや相談相手もいない中で悪戦苦闘しながら前に進んでいる現状があります。
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)は、セミナーや交流会を中心とした場づくりをもとに情報を集約することで、障がい者雇用担当者のニーズに合わせた資料提供など社内における適切な雇用促進のサポートをしていきます。
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)についての詳細はこちらをご覧ください。