『パラちゃんねるカフェ』がお届けする、企業で活躍する障がい者社員インタビュー。今回は、株式会社サイバーエージェントウィルで働く砂澤克洋(いさざわかつひろ)さん、小川内絵梨(おこうじえり)さんに仕事内容や働く上での工夫など、さまざまなお話を伺いました。
はじめに
サイバーエージェントウィルは、株式会社サイバーエージェントの特例子会社でサイバーエージェントグループから業務の委託を受け、東京、大阪、仙台、沖縄を拠点に身体障がい、精神障がい、知的障がいの方々を中心にマッサージルームの運営やオフィスサポート業務に従事しています。
今回、お話を伺った砂澤克洋さんは、HRトレースチームのリーダーとしてマネジメント業務を、小川内絵梨さんは事務サポートとして働いています。
それぞれの仕事内容や働く上での工夫など、さまざまなお話を伺いました。『パラちゃんねるカフェ』がお届けする、企業で活躍する障がい者社員インタビュー。障がい者雇用を推進している企業やこれから働こうとしている障がいのある皆さまに、ぜひ読んでいただければ幸いです
ストレスと疲労をたまらない環境作り、在宅勤務で大切なこと
HRトレースチームのリーダー 砂澤克洋さんは、サイバーエージェントウィルに入社以来、在宅勤務です。設立当初の初期メンバーで、一度の退職と個人事業主を経て、現在はサイバーエージェントウィルに戻り8年目、2021年6月よりマネジメント業務を担っています。
現在は、茨城県龍ヶ崎市から在宅で働いており、頸椎損傷により胸から下が完全麻痺で車いす生活をしています。サイバーエージェントウィルでは、本社機能含めた勤怠関連、経理関連業務が委託されており、HRトレースチーム13名、経理チーム30名が障害種別問わず一緒に働いています。
多くの障害者雇用では、障害種別や勤務形態を統一することで、働く上での配慮や管理を行き届きやすくする工夫が見られます。障害種別や勤務形態問わず、チームで働く上での難しさや工夫があれば教えてください。
それぞれの障害特性を把握するために時間は要しますが、丁寧なコミュニケーション、気配りや配慮は障害の有無に関わらず大切なことです。気軽に相談できる環境があるため、大きなトラブルも特にありません。
コミュニケーションは主にチャットを活用するため、個々の働く環境や状況を想像した言葉選びや遠隔勤務による不安感を与えないレスポンススピードなどは大切にしています。
コロナ禍で在宅勤務やリモートワークが広がる一方で、業務の管理や指示、モチベーションの維持に課題も挙げられます。在宅勤務歴10年以上の砂澤さんにとって在宅勤務における工夫があれば教えてください。
部屋の環境作りには特にこだわっています。テーブルやパソコンの高さ、画面の大きなディスプレイや明かりの色など居心地が良く、ストレスと疲労がたまらない環境作りを心掛けています。また、困ったときに連絡しやすい体制作りやメンバーとの信頼関係の構築も常に意識するようにしています。
今後は、リーダーとして各メンバーの特性や能力の成長を追求することが仕事のやりがいと話す砂澤さん。それぞれの障害特性に適した働き方やキャリアパスの存在とそれを支えるチーム体制が、働く意識や安定したモチベーションへと繋がっているのではないでしょうか。
「まずはやってみる」のハードルを下げる。不安感を減らす体制づくり。
HRトレースチーム、経理チームで働く小川内さんは、学生時代に統合失調症を発症後、療養生活を経て、社会人未経験でサイバーエージェントウィルに入社しました。働く上で不安はなかったのでしょうか。
障害特性としては幻聴や被害妄想が強く、周囲の言動に過敏になり、緊張感や不安感、焦燥感に繋がり疲弊してしまう傾向があります。コロナ禍の就職でもあり、入社前も研修中も不安感が強くありましたが、些細なことでも相談できる上司やチーム体制があり、一つ一つの仕事が正しく完了していくことで納得感が積みあがり、少しずつ不安感も薄れていきました。
不安感に苛まれ体調を崩してしまう方も少なくありません。小川内さんの不安感に対する対処法や工夫があれば教えてください。
ひとりで不安を抱えず、すぐに上司に相談をするようにしています。先輩から「私も間違えることがあるので確認のための確認でした。」と言われた経験があり、不安なことは伝えて良いんだ、そのためにチームで動いているんだ、と実感できたことが大きかったです。
また、常にクロスチェック体制があり、ミスがあってもフィードバックがあります。チームで動いているという実感が誰かが必ず見てくれているという安心感に繋がっています。
新人賞の受賞など入社1年目から活躍している小川内さん。療養生活を経て、未経験から働く中で、入社して良かったと思えることや働くことへの心境の変化などがあれば教えてください。
統合失調症を発症してからは自信が持てず、何もできない人間なんだと思っていました。仕事を通じて周りの人たちから日々評価をいただく中で、ちゃんとできるんだと自信を取り戻せたことが何より良かったことです。
療養生活中は漠然と働いて幸せになりたいと思っていましたが、今は本気で思うようになりました。働くって楽しいと感じています。
不安を感じやすい障害特性がありながら、新たな業務やキャリアパスを見据える小川内さんの姿はとても印象的でした。ハード面の整備と同時にソフト面を意識した体制や組織作りが障害者雇用の可能性を広げていくと再認識するインタビューとなりました。
取材後記
今回の取材には、取締役 星野浩輝さん、6月で定年を迎えた元リーダー 佐々木健司さんにも同席いただき、チームで働く、誰かが必ず見ていてくれる、という小川内さんの言葉を私自身も実感しました。
在宅勤務の導入、精神障がい者の雇用など、まだまだ消極的な企業も少なくないかもしれません。
まずは一人ひとりと向き合い互いを知ることから始めてみると、誰もが働きやすい環境、組織とはどういうものなのかが見えてくるかもしれません。