採用担当者、受け入れ部署の上長、役員など障がい者雇用に携わる、関心がある方々が集う障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)が2023年6月14日(水)に第3回セミナーを開催。小売・サービス業界での、店舗における障がい者雇用の取り組みと可能性について議論しました。
はじめに
2022年1月に障がい者雇用特化型の求人サイト「パラちゃんねる」をオープンして1年以上が経ち、これまで3000社を超える採用担当者と対話を繰り返してきました。
- 障がい者雇用のはじめ方がわからない
- 業務の切り出し、受け入れ部署の開拓ができない
- 相談する場所がない
- 新卒採用と兼業で手が回らない
- トップが障がい者雇用にネガティブである etc
障がい者雇用担当者は、役員と現場の狭間で理想と現実のギャップに日々悪戦苦闘しています。教育課程での構造的分断がある日本においては「働く」を通じた共生社会の実現が求められ、旗振り役となる障がい者雇用担当の積極的な社内活動が必要不可欠です。
そこで、私たちは、障がい者雇用担当を後押しするチームとしてコミュニティを形成し、
職場での雇用促進に向けて全面的にサポートすることとしました。
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)には、既に30社を超える障がい者雇用担当者が集い、互いの悩みや課題を共有し、障がい者雇用のあるべき姿を模索し続けています。
前回までのセミナーはこちらから↓
今回は、FLAT(ふらっと)主催セミナー「他社の事例から学ぶ交流会」についての活動レポートをお届けします。
ファシリテーター
NPO法人Collable(コラブル)の代表理事 山田小百合さん。障がいのある人たちや多様な人との共創の場をつくるCollable(コラブル)は、ワークショップを通じて「インクルーシブデザイン」の普及や、障がいの有無をこえた場作り、それらの啓発活動を行っています。オブザーバー
パラちゃんねるのオーナー 中塚翔大。2020年4月に多様性を推進するプロジェクト「パラちゃんねる」を立ち上げ、ラジオ・コラムのメディア活動と障がい者雇用特化型の求人サイトを運営し、「誰もが特性を活かせる、多様な選択肢のある社会」を目指して活動しています。
当日は16社の採用担当者にご参加いただき、小売業・サービス業など店舗型での障がい者雇用の取り組みと可能性について課題を検討しました。
接客業における採用基準と定着までの支援とは
今回のFLATセミナーは店舗型での障がい者雇用の取り組みについて小売業を中心として16社が集まり交流会形式で互いの悩み、課題を話し合いました。
A社
弊社は、スポーツウェア、シューズを取り扱うメーカーとしてショップやスポーツジムの運営、体育館等の施設の委託運営、介護事業を展開しており、全国に130~140店舗を運営しています。私は15年ほど人事を担当しており、中途採用にプラスしてグループ会社の障がい者採用を担当しています。
B社
弊社は、エネルギー事業のほか、フィットネス事業、介護事業を展開しており、グループ全体では600以上の店舗が全国にあります。私は約4年前に障がい者雇用の専任担当として中途で入社して、現在は採用活動以外に労務も担当しています。障がい者雇用の担当範囲はグループ全体ではなく、本体のみとなっています。
店舗では具体的にどのような職種で障がい者雇用を実現していますか?
A社
今期はスポーツウェア直営店での販売職、委託運営する施設スタッフ、介護スタッフの4名を採用予定で、取り組みとしては弊社内では初となる外勤での雇用をミッションに掲げています。ただ、研修やサポート体制は少しずつ整備されているのですが、店舗での業務の切り出しが難しかったり、分かっているつもりでも健常者と同じ業務を渡してしまったり、店舗での受け入れと運営にはやはり課題がありますね。
店舗はアルバイト・パートなど年齢層や雇用形態も多岐に渡るため、教育の浸透が難しいと思います。障がい者雇用の実現に向けて店舗で実施されている研修はありますか?
A社
本社での一般研修はありますが、障がい特性に合わせてカスタマイズができていないこともあり、現場でのOJTが中心となっています。
B社
弊社も同じですね。フィットネス事業だと2週間ほどの研修があるのですが、なかなか障がい者雇用で同様に実施することはできておらず、現場にマニュアルも整備されているためOJTが中心となってしまっています。もちろん一般就労の研修に参加可能な方は参加していただいていますが、後付けになっているのは事実です。
C社
店舗で働く場合、フロアやトイレの構造上、車椅子だと働くことが難しかったりと制約が伴うことがあります。募集から採用までのどの段階でフィルターを掛けているのでしょうか?
B社
募集段階でお断りすることはありませんが、介護事業では利用者の安全管理ができるかどうかが判断基準になっています。例えば、全盲の視覚障がいがある方だと一番大事な部分を担えないっていうことがあるので、応募段階でまず正直に伝えるようにしています。そのうえで、対策があれば次のステップも検討していますね。
「不安・心配・怖い」という漠然とした不安の解消するには?
障がい者雇用の意識の高まりと共に店舗での障がい者求人も増えつつあります。一方で、精神障がい・発達障がいなど見えづらい特性があると顧客対応の懸念から採用や配属を控える場合も少なくありません。
D社
弊社はアパレルチェーン店を運営していますが、昨年から精神障がい、発達障がいの方の店舗での採用に挑戦するようになりました。お客様の接客対応ということでコミュニケーションやストレス耐性など一定の基準が必要になるため面接段階で厳しく見極めています。そのため、採用ハードルは高くなってしまいますが、過度な心配やサポートをする必要もなくなっています。一方で、過去の経験から精神障がいのある方については就労支援機関の支援員が付いている方を現在は採用しています。
採用ハードルを設けることで店舗側の過度な負担を減らし、就労支援機関からのサポートと情報提供があれば定着しやすくなるということですね。
D社
とはいえ定着率は50%程度なのが実態となっています。店舗の従業員との人間関係や働く中で課題が出てきて退職に至る場合も少なくありません。
C社
店舗の従業員への障がいに対する教育などは実施していますでしょうか?
D社
本人の了解を得ての話ですが、障がいの情報を開示するようにはしていますが、特別な配慮はしていません。もちろん、相談があれば勤務シフトの労働時間や勤務曜日を一定にしたりと工夫も凝らしますが、当初は良好な関係が合ったとしても、何気ない一言や顧客対応でダメージを受けてしまって翌日から出社できないなど予測できない事象も少なくないので、なかなか店舗の接客業務における障がい者雇用の定着には苦心しています。
A社
皆さんは受け入れ部署への研修やフォローってどうされていますか?弊社では受け入れ部署から「不安・心配・怖い」という漠然とした声があって積極的な業務の切り出しが進んでいません。相談窓口を設けてもどうしても障がい者雇用専用というイメージがあったり、リーダーなどマネジメント層へのサポート体制への取り組みについて気になりました。
B社
相談窓口があることが羨ましいと思いました。弊社は私が個別に確認しているので、どうしても後手後手に回ってしまいます。障がい者雇用を意識し過ぎて、ちゃんとしなきゃと過度に神経質になったり、障がい者への苦言や改善点は発信し辛いという自分勝手に感情を抑制してしまったり、問題の発見が遅くなってまうのが課題です。
E社
弊社は百貨店・スーパー・コンビニなどを展開していますが、毎月1回の定着面談を就労支援機関の支援員と店長と実施しています。定着面談があると課題の早期発見・解決に繋がりやすく、そこでも解消されない場合は人事部が介入して第三者としての観点での情報整理など誤解の解消をサポートすることはあります。
中塚
全国的に見ても就労支援機関と連携した採用ケースは増えてきていると思います。安定して働くことに課題がある場合、職場だけでなくプライベートでも課題を抱えていることが少なくないので、店長がそこまでサポートすることはできないですし、安易に介入して店長が精神的に潰れてしまうケースも目にします。就労支援機関がプライベートをサポートし、企業はあくまでも仕事のサポートと明確な役割分担のもとで運営している企業は比較的安定しているイメージがありますね。
接客対応はリスク?障害者雇用のスモールステップを考える。
現在、店舗での障がい者雇用では品出し・在庫管理などの接客を伴わないバックヤードでの採用が中心となっています。精神障がい・発達障がいのある方の接客対応においてクレームなどのレピュテーションリスクを考える企業も少なくありません。
A社
皆さんから意見も聞く中で配属前研修の充実というより、やはりOJTによって現場に馴染むかどうか様子を見る時間を設けるというのが互いにWinWinなのかなと思いました。ただ、そうなるとお客様の目線というのをやはりリスクとしては考えざるを得ないですよね。
B社
弊社も同様で顧客対応リスクには意識してしまいますね。例えば、介護事業であれば入社の段階で利用者への説明なども必要に応じては対応していますが、あくまでも当事者と店舗に判断は委ねているのが現状です。
中塚
店舗といってもサービス対象が単発・短期的な顧客か継続的な顧客によってリスク回避の方法は大きく異なりますよね。なかなか初見の顧客に開示は難しいですからね。
F社
弊社は就労継続支援A型事業所を運営しており、私はサービス管理責任者として働いているのですが、私たちの事業所では業務の渡し方をスモールステップにしています。一つの仕事ができたら、次の仕事と徐々に増やしていきながら、都度の事前説明を大切にしてフォローしているので参考にしていただけたら思います。
中塚
確かに雇用の定着とリスク回避をどう実現するかということを考えるとスモールステップのような通常とは異なる業務の切り出しをしたほうがスムーズかもしれませんね。どうしても研修スタイルや工数は増えてしまうので導入のし辛さは伴いますが、利息を繰り返すことでの採用コストや店舗との関係性を考えると目指して良い気がしますね。本やDVDなどのリサイクル商品の販売を手掛ける企業の例を紹介すると本棚の陳列や補充は知的障がいのある方が担当しています。業務の切り出しという視点を取り入れることができると障がい種別も幅広くターゲットにできるため採用難易度も下げれるのでリスクへの勇気は必要かもしれませんが、挑戦する価値はあると考えています。
セミナー参加者のアンケート結果
■セミナー満足度
非常に良かった:30%
良かった:60%
普通:10%
- 企業の困り事、工夫している事など情報を聞く事ができた。
- 他社様の事例をお聞きし、また同じような悩みがあることを知ることができました。今後、この場所をお借りしながら、一緒に考えていけるように思います。
- 現在の取り組みの再確認ができました。また、入社後の定着について、OJTで活用できそうなスモールステップのプランニングは取り入れたいと思いました。
- 他社のご経験をお聞き出来て、良かったです。
- 実店舗採用をされている話を聞く機会はなかったため、その課題などが具体的に知れて勉強になりました。
障がい者雇用担当と言っても知識・経験が最初からあるわけではなく、ノウハウや相談相手もいない中で悪戦苦闘しながら前に進んでいる現状があります。
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)は、セミナーや交流会を中心とした場づくりをもとに情報を集約することで、障がい者雇用担当者のニーズに合わせた資料提供など社内における適切な雇用促進のサポートをしていきます。
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)についての詳細はこちらをご覧ください。
第4回障がい者雇用担当者交流会FLATセミナー開催が決定!
好評につき第4回 FLATセミナーの開催も決定しました。
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■テーマ
デル・テクノロジーズの研修型雇用
~障がい者雇用の新たな道とその実践~
日時:7月13日(水)12時~13時
方法:Zoomによるオンライン
定員:30社まで
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後日、セミナーの開催状況については報告します!
※募集を終了しました。