心理カウンセリングのススメ6~腹をくくる!

大きな電球を持ち上げるビジネスマンのイラスト。

前回のコラムの最後に「心理カウンセリングは心のエネルギーを使うこと」だとお伝えしました。そう言う意味では、ちょっとした「覚悟」が必要かもしれません。その点について、もう少し深掘りしていきたいと思います。

『腹をくくる!!』ってって(笑)ちょっと意外かもしれません。心理カウンセリングを受けるのに、なぜ腹をくくらなければならないのか?こんな事を書くと、心理カウンセリングを受けることに尻込みしてしまうかもしれませんが、心理カウンセリングを受けて「こんなはずじゃなかった!」と誤解されたくないと思い、キチンとここでご説明したいと思います。

鏡に映ったライオンを見ている猫のイラスト。

心理カウンセリングは自分自身と向き合うこと

先日のコラム記事『心理カウンセリングのススメ~そもそも心理カウンセリングって?』『心理カウンセリングのススメ~心理カウンセリングの効果・本質』でもお伝えしておりますが、答えはクライエントが持っています。心理カウンセラーは、その答えを様々な手法を用いて“気付き”を与え、クライエントの認知や行動に変容を起こし、問題解決を目指します。

その過程の中で、クライエントが悩んだ時や不快に思った時、つらい気持ちになった時など、その時のシチュエーションを思い出してもらう事がある事は以前にもお伝えしました。

思い出すということは、その時の感情も一緒に思い出すことに繋がり、セッションの間、またはその後までその感情を引きずることもあります。本来ならば、あまり思い出したくないことを思い出すこともありますので『腹をくくって』受けていただきたいと思います。

嫌な自分が顔を出す

セッションの中で過去を振り返ったり感情を想起したりする時、何故その様な状況になってしまったのか、どうしてそれを苦痛と感じてしまうのか等、その事実を俯瞰で見たり客観的に観察することがあります。そうするとその時のクライエント自身の対応の仕方や受け止め方が『メンタルヘルス上好ましくない対応の仕方・受け止め方』であると見えてくることがあります。つまりクライエント自身の苦手なこと・欠点・改善点などが、自分自身で見えてきます。それを『受け入れ改善すべきこと』として受容できるかどうか、が鍵になります。

ボクも過去、心理カウンセリングを受けていた時、心理カウンセラーとの信頼関係が十分築けていていても、心理カウンセラーから提案されたことなどを「そうは言っても…」「今の自分には無理」「変えたくても変えられない」と言う言い訳をして(笑)、表面上は受け入れた様な風でやり過ごしていたこともあり(笑)、後々から後悔することもありました。

顔認識技術を示す、赤いラインで描かれた顔のネットワークが表示された女性のイラスト。

自分自身の信じてきたモノや価値観を否定することもある

例えば『人間関係の築き方』や『正義や悪の判断基準』『価値基準となる優先順位』など、クライエントが長年培ってきたモノを、根本からひっくり返さなければならない事もあり得るのです。それは、クライエントが人生という長い旅路を歩んできて自分自身で取捨選択してきたり、時には両親や血縁者または近親者の助言などを信じて貫いてきたモノなど、それらを一度、見直す必要が出てくることもあるのです。するとそれまで信じていた物事を“変化させる”必要性が出てくるのです。

それは、正しいと思っていたりベストだと思っていた方法が、実はクライエント自身を傷つけたり本来の自分を抑圧したりしていることであったりするからです。

古い価値観を新しい価値観にアップデートすると言うのは、非常に苦痛を伴うこともあります。それは、新しい価値観が絶対的に今の自分自身に必要だと分かっているけれど、古い価値観を否定することでそれまでの自分自身の信じてきた物事を否定することに繋がり、大げさに言ってしまうと、今までの『自分の存在意義』みたいなものが揺らいでしまう可能性もあるからです。

思い出したくても思い出せない事実があぶり出される

今現在、苦しんでいる様々な症状の原因が、実は幼少期の体験が影響していたり、顕在化していない(無意識下での)トラウマであったり、見て見ぬふりをしている家族関係であったりすると、セッションを重ねる毎に、徐々にその問題が顕在化・表面化してくる事があります。そうすると、クライエントにとってみたら、意識したくない事や忘れてしまいたい事、無意識のうちに蓋をしてしまった事などをえぐり出すわけですから、その事を頭の中で追体験してしまったり、その当時の感情が蘇ってきたりして、かなりツラい事になりかねません。

また、その様な経験や出来事を、クライエントは重要と思ってもみなかったりすると、突如湧いてきた感情に戸惑ったり、さらにその感情を否定的に受け止めたりする事にもなり得るんです。そうなると、過去の自分自身と向き合いそして対峙せざるを得なくなり、今現在のクライエントでも処理しきれなかったり、上手く受け入れられなかったりすると、さらにこじれてしまいます。

そこで「状態が悪くなった」「心理カウンセリングが原因で悪化した」と思い、中途半端に心理カウンセリングを辞めてはいけません。それこそ、もっと酷い心理状態になり、それが身体化(精神症状が身体症状として現れること)してしまう恐れもあります。

この段階で、過去の自分と対峙し真正面から向き合い、隠されていた感情などに気づきが得られることで、過去の自分では処理しきれなかった経験やその感情を、様々な人生経験を積んだ今の自分が、キチンと受け入れ認めることで、様々な問題が解決に向かっていきます。

ここで強調したいのは、あくまで抑圧してきた事実や感情は、今のクライエントよりずっと幼く稚拙で、その対処法しか知らなかった、出来なかっただけなのです。言い換えれば、今のクライエントであればキチンと受け止め、対処し、楽に処理できる可能性が高い、ということです。

大きな電球を持ち上げるビジネスマンのイラスト。

今回は少し怖いことばかりをお伝えしました。

誤解のないようにお伝えしたいのは、これらの事全てがクライエントの中で起きないかもしれないし、起きるかもしれない、と言うことです。それにその程度に大小の差があります。それは心理カウンセリングの内容次第のところもありますし、抱える問題の本質がどこに(何に)あるのかにもよります。

そして覚えていて欲しいのは、必ず『そばに心理カウンセラーが寄り添っている』と言うことです。

変わること変われることは、怖いことではありません。喜ばしいことだと思って頂きたいと思います。

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ABOUT ME
1975年岐阜県生まれ。長く理学療法士として医療機関に勤務。働きながら社会福祉士免許取得後、大学院修士課程を修了。リハビリテーション療法学修士。その後、産業カウンセラーの資格を取得。現在はフリーの心理カウンセラーとして活動中。セクシャルマイノリティ(ゲイ)であり身体障害者(免疫機能障害)であり精神障害者(双極性障害)である。