障害をテーマにしたクリエイティブ作品は幾つもあります。それは時に勇気を与え、時に、考えるきっかけを与えてくれ、時に現実の残酷さを教えてくれます。
今回は、聴覚障害がテーマの『Coda コーダ あいのうた』という映画作品をご紹介します。
コーダ=聴覚障害を持つ親のもとに健聴者として生まれた子供
まず、「コーダ」という言葉に馴染みがない人もいるかも知れません。
コーダというのはCODA=Children of Deaf Adults のことで、親が聴覚障害を持つ子供を指します。聞こえのレベルは言及されておらず、聾唖でも難聴でも、その子供はコーダということになります。
本作品は、聾唖者の両親と兄を持つ高校生の女の子ルビーが、コーダとしての自身の役割と夢に向かう事への両立に悩むヒューマンドラマです。
家族3人が聾唖者で、ルビーはみんなのサポート役として必要不可欠でした。
家族は漁師として生計を立てていて、決して裕福ではありません。ルビーは歌うことが大好きですが、耳の聞こえない家族にはそれを理解されない面もあり悩みます。
️夢を追うこと、家族を支えること
歌うことが大好きなルビーは、高校で合唱サークルに入ります。顧問の先生はルビーの才能に気づき、積極的にレッスンを行い、音楽系の大学に進むことを薦めました。しかし、レッスンに参加すると漁業のサポートが充分にできません。
彼女の音楽の才能を知らない家族は、レッスンに熱心なルビーに苛立ちを覚えます。
「障害者を支える家族」という立場で、夢か家族かで葛藤する様子は心が痛くなります。聾唖者の家族を学校で馬鹿にされる場面もあり、障害を持つ当事者でなくても、支える者の生きづらさや葛藤が読み取れます。
私は「障害さえなければ…」と思ったことは数え切れませんが、コーダの人も「健聴な親のもとに生まれていたらこんな事で悩まなかったのに」と悩む人がいるかもしれないと気づきを得ました。障害の程度が重ければ重いほど、周囲のサポートに頼らざるを得ません。家族という切れない関係性で、障害者のサポートに悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
️家族の葛藤
コーダであるルビーの生活を主軸としてストーリーは進みますが、家族の思いも描かれています。なんでも妹に頼らざるを得ない現状に、兄のレオはどこか憤りを感じています。漁業のサポートを申し出る妹に、自分たちで何とかなると突っぱねる兄。そんなシーンも登場します。兄としてのプライドでしょうか。私は聾唖者ではありませんが、難聴者としてレオの憤りがわかる気がします。
️聞こえなくても音はそこにある
『Coda コーダ あいのうた』で、印象的なシーンをご紹介します。
星空の下、ルビーと父の対話シーン。歌うルビーの首元に触れその振動を確かめる父。娘の歌声を聴くことはできないけど、震える喉に確かに歌声がそこにあると実感しています。父親役のトロイ・コッツァーさんは聾唖者の俳優さんです。
音がなくても、彼女の歌声の素晴らしさと家族の愛情が見事に表現されたシーンです。
最後に
ネタバレになるので、ルビーや家族が最後にどんな選択をするのかは伏せておきましょう。コーダの主人公とその家族を描いた心温まる作品、『Coda コーダ あいのうた』ぜひご覧になってみてください。