心理カウンセリングのススメ3~国も認めたメンタルヘルスの重要性

デスクに座って疲れて頭を垂れる女性のイラスト

前回のコラムで、日本でなぜ心理カウンセリングが受け入れられ難いのか、また否定的なイメージがあるのかボクなりに考察して3つの観点からお話しました。

それでも「心理カウンセリングなんて…」と思っている方もいるのでは?そんなアナタ、そこのアナタにもう一歩踏み込んで、心理カウンセリングを受けてみようかなと言う気にさせるお話し(笑)を致します。

あなたにとって「健康」とは?

日本人は「健康に敏感な国民」といっても良いかもしれません。2021年厚生労働省の発表の「令和4年簡易生命表の概要」によると、日本人の平均寿命は男性で81.5歳、女性で87.6歳であったとのことです。また、2019年の日本人の健康寿命は72.7歳、女性は75.4歳であったと。

どちらも年々、延伸してきていて、それは国の施策はもちろん、医療技術の発展や国民一人ひとりの健康への意識が高くなってきていることがその要因ではないのかなぁと思っています。

しかし、ご自身の健康意識というのは、どこを向いているのか、一度、立ち止まって考えてみて欲しいのです。何をもって「健康だ」と判断しているのか、と言うことです。

体重?
体脂肪率?
血圧?
血糖値?
尿酸値?
コレステロール値?
蛋白尿?

よーく見て考えてみて下さい。どれもこれも、臓器、とりわけ内臓の働きを表す値ですよね?しかもそれらに自然と関心が向いているのではないでしょうか?

おそらくそれは健康診断や特定健診などで必ず項目として挙がっていて、血液検査や尿検査などから分かることなので、自然とそちらに目が行くのは仕方ないかもしれません。それに「数字」で表されるモノだから、一目瞭然ですしね。

職場での「ストレスチェック」が義務になった

じゃあ一方で、このことはご存知ですか?

労働安全衛生法」という法律が改正されて労働者が50人以上いる事業場(じぎょうば)では、2015年12月から「ストレスチェック」が毎年1回、全ての労働者に対して実施することが義務付けられることになっています。

つまり、国もやっと「ストレスを管理することが健康に重要である」と認めたわけです。

もしかしたら、これをお読みいただいている方の中でも、ご自身の会社や職場で健康診断の際に「ストレスチェック」を受けられたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

これは随分前からなのですが、国の施策として「病気の治療」よりも「病気の予防」に主眼が置かれるようになりました。その最たるものが健康診断であり特定健診なのかなと思います。

それは何故かというと、『予防+早期発見+早期治療が最も重要で、健康寿命を延伸させる』から、というのが表向きの理由(笑)。他にも、国民の医療費削減に効果的であると言う側面も持っています(これがおそらく大きな理由)。

「ストレスを軽減させること」が「疾患の予防や早期発見に繋がる」と法的に認められたと言っても過言ではありません。

心臓のアイコンと聴診器を持つ医者のイラスト

ストレスが原因の病気はこんなにある!

では、ストレスが原因で引き起こされる病気ってどんなものがあるか、ご存知ですか?

直接的にしろ間接的にしろ、おおよそ以下のような病気が挙げられると言われています。厚生労働省「こころの耳」ホームページより抜粋して表にしました。

ストレス関連疾患と心身症のリスト

なんとまあ!こんなにあるんですよ(ちなみにボク、突発性難聴を2回やってしまっていて、その後遺症で両耳の耳鳴りや右耳の聴力が落ちました)。

ここに挙げたのは「病気の名前=病名」です。病名がつくということは、何らかの形で医療機関を受診して医師の診断がついた状態のことですよね。

問題なのは、医療機関を受診しないで「休めば治る」という安易な対処法でなんとかしようと思っていると、思わぬ事態を引き起こす、と言うことです。

上の表の「心の病気」に記載している様な精神・心理状態や、休んでいるはずなのに休まらない、何もしていないのに疲れる、積極的に何かをしたいと思わない、いつも楽しいと思えていることが鬱陶しいと思えてしまう、腰が重くて何をするにも億劫である、日々のルーティン(料理をする・歯を磨く・ひげを剃る・入浴する・洗濯をするなど)が後回しになる、そのような症状が出現するようになると、なかなかそこから抜け出せなくなります。

それがいわゆる「抑うつ状態」です。

デスクに座って疲れて頭を垂れる女性のイラスト

ストレスを感じたら、心理カウンセリングを受けてほしい

繰り返しになりますが、国が「ストレスチェック」を毎年の健康診断の項目に追加した、ということはストレスが労働者のあらゆる健康に影響するから、と判断したためだと思います。

そして「ストレスチェック」で「高ストレス者」と判断された場合、「産業医との面談」を申し出る事ができます(絶対ではない、のですよ…)。そして必要に応じて、産業医から産業カウンセラーへ引き継ぎ、心理カウンセリングを受ける、と言う流れが主流になりつつあります。

近年、この様な動きを受けて『EAP(Employee Assistance Program)サービス』と言う業態が注目され始めました。

どんなサービスか端的に言いますと「企業が自社で産業医や産業保健師、産業カウンセラーなどの職員を雇い入れるのは非常にハードルが高いので、外部委託された産業保健スタッフを受注する」と言うサービスです。

この様なEAPサービスのおかげて、自社の産業保健分野・安全衛生管理分野の人員を容易に導入することができるようになりました。

今のご自身には必要ないと思われても、ご自分の勤めておられる会社や職場に、産業保健スタッフがいるのかどうか、どうしたら利用できるのかなどを今一度、ご確認をしておくことをオススメします。そして、ご自身の心身の不調を放置せず、まずはぜひ企業内の産業保健スタッフを頼ってみていただきたいと思います。

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ABOUT ME
1975年岐阜県生まれ。長く理学療法士として医療機関に勤務。働きながら社会福祉士免許取得後、大学院修士課程を修了。リハビリテーション療法学修士。その後、産業カウンセラーの資格を取得。現在はフリーの心理カウンセラーとして活動中。セクシャルマイノリティ(ゲイ)であり身体障害者(免疫機能障害)であり精神障害者(双極性障害)である。