通行人がモブキャラになった!~自分でかけた「呪い」から解放されて日常が変化

ピンク色の夕焼け雲

複雑性PTSDと診断され、カウンセリングを受ける中で私は自分の中にあった「誰の目から見ても正しい答えを選び続けなければならない」という強迫的な考えが消えた。すると、目に映る世界はとても優しいものになり、ようやく“自分が主役の人生”を送れるようにもなった。

イヤホンから流れる爆音で人の視線に怯える自分を宥めた

歩道を歩く人々の足元

「お母さんの言うことは正しいから」と繰り返し言う過干渉な母親と、常に自分が心地よくいられるように家族を動かす父親を持った私は自分の感情より、人の機嫌を取ることを、ずっと優先してきた。

自分が出した「正しい」には、いつも自信が持てず、母親やネットの声、彼氏の反応などを聞いては「やっぱりこれでいいんだ」と思ったり、「私が思った選択ではダメだったんだ」と落ち込んだり、自分の意志がない日常が当たり前だった。

街を歩く時は、いつも怖かった。通り過ぎていく人が背景になってくれないから。街中だけでなく、いつも行くスーパーの中や電車の中でも人の視線が怖くて、緊張感や警戒心が膨らむ。自分は誰かから笑われている。貶されている。そう感じるから、イヤホンをつけ、音漏れするほどの爆音を耳に流し込んでいた。

イメチェンをしたくても、「変わったね」と注目されるのが怖くてできない。自分ごときが、誰かの注意を引くなんておこがましいと思った。

パートナーや友達と旅に行くと、出店の人やお店の店員さんが怖い。注文をするだけで心臓がドキドキして、体が固まる。リフレッシュになるはずの旅行は、自分のダメなところ見つけの場になっていた。

できる限り、誰の視界にも私を入れてほしくない、透明人間になりたいと思っていた。

自分でかけた「呪い」が解けて世界が180度変化!

ピンク色の夕焼け雲

だが、カウンセリングを受ける中で、私の日常は180度変わった。それは、100%正しいことも誰もが首を揃えて頷く間違いも、この世にはないと気づけたからだ。その気づきを得てから私は、「人はみな対等」とも思えるようになり、「私は最下層ではなく、他の人と同じ階層にいていい」と、頭の中にあった自分の居場所の見直しもできた。

すると、不思議なことに人とすれ違う時の恐怖心が自然に薄れていった。今までは自分自身よりも、すれ違う人ひとりひとりが主役となってキラキラしており、そこに自分という存在が添えられているだけの風景だった。それが、自分のほうが主役になり、すれ違う人がモブキャラという感じで背景に溶け込んでくれるようになったのだ。

すれ違う人の顔や反応が気になるという強迫的な考えもこみ上げてこない。イヤホンから流れる好きな音楽よりも、五感で外の世界を感じたくなった。人の足音、鳥のさえずり、風の声、誰かの話声、仲良く歩く親子の姿…全部微笑ましいと心から思えた。

周囲がモブキャラになってくれたら、行動範囲が広がっていった。気になっていたカフェへひとりで行け、「あの場所に私はそぐわない」と躊躇していたお店を訪れることもできるようになった。それらは全部、店員さんとの会話や人の視線が怖くてできないことだった。

旅行やイベントも全力で楽しめるようになった。心の重荷が下りてから初めて行ったイルミネーションイベントで、私は年甲斐もなく、周りの子どもたちに混ざってピカピカ光る風船を買った。

人の目を気にせず、欲しいものを買って思いっきり楽しむ。これまでの私では、絶対にできなかった楽しみ方。「リフレッシュ」って、こういうことなのかと初めて心で分かった気がした。

夜に光る風船を持つ女性

正直、久しぶりに外出する時は、街中を歩いていて人の視線が怖いと思うことはまだある。けれど、周囲の人がみんな自分に注目している、嗤(わら)っているとは、もう思わない。最初は怖くても歩いているうちに、周囲がちゃんとモブキャラになってくれることもある。

2時間ばっちりメイクをしないと近所のコンビニにすら行けなかった生活も変わり、「眉毛とファンデーションだけでいいや」と、ラフなメイクでスーパーへ向かえるようにもなった。

もし、誰かが私のことを嗤っていたら…。そんな悲しい思考が頭に生まれる時もあるけれど、「それは嗤う相手のほうに問題がある。私は自分らしくいていい」と自分自身に優しい言葉をかけ、心をさする。

どんな人にも誰かを貶す権利はなく、人は平等で対等。委縮する地位や名誉だって、肩書きにすぎない。綺麗ごとのように聞こえるだろうが、この思考は今の自分にとって、“私らしく生きる心の芯”になっている。

ありのままの自分で生きていい。そんなに大人でいなくても、優等生でなくてもいい。肩に力が入ってしまう頑張り屋さんにも、そんな言葉を届けたいと思う。

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ABOUT ME
猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。