ようやく自分の命を好きになれた!~コロナに罹患して気づいた「頑張り屋な身体の尊さ」

胸に両手を当てた女性

複雑性PTSDの治療としてカウンセリングを受け始めたことにより、私は過去の傷が癒えただけでなく、染み付いた自己卑下の思考も変化。持病がある自身の体に対する考えが180度変化し、暮らし方も変わった。

自分の身体が「頑張り屋さん」だったことに気づいた日

些細なことで体調を崩しやすく、回復に時間がかかる自分の身体が嫌い。先天性心疾患を持つ私は、小さい頃からずっとそう思ってきた。体が弱いゆえのもどかしさは、大人になるにつれて増す。

仕事量が多いと、すぐに疲れてしまったり、取材に行くと疲労感で翌日は仕事ができなかったりと、思うように身体が動かないことが辛い。足りない心室や心房、脾臓の価値を痛感するたびに、「出来損ないの身体」だと自己卑下していた。

ただの風邪なのに1週間も体調が戻らない時には、いつも涙が出た。なぜ、自分は普通の人みたいにできないんだろうと、一生、手に入らない「普通」に憧れ、悔しさを噛みしめた。

しかし、そんな考えが大きく変わる出来事があった。それは、カウンセリングを開始してから8ヶ月が経った、2024年1月のこと。年始早々、コロナに罹患してしまった私は発症から4日目に息苦しさを感じたため、かかりつけ総合病院の救急外来へ。

幸いにも検査の結果、肺炎などの異常は見られなかったため、車の中で安堵した。すると、心に不思議な感情が。自分が思っているよりも私の体は丈夫なんだなと、なぜか誇らしくなったのだ。

単心室・単心房症で脾臓がない私は、いわゆる普通の人と比べて、色々足りていない。けれど、足りないながらも、私の体はウイルスと必死に戦い、生きようと頑張ってくれている。そう思え、涙が出た。今までの自己卑下とは違う、温かい涙だ。

私は泣きながら、今までの人生を振り返りもした。大きな手術を3度も乗り越えてくれたこと。小学生の頃に肺炎になったものの、完治したこと。流産後の貧血で苦しかった時、生きようともがいてくれたこと。自分は気づいていなかったけれど、いつも私の体は命を紡ごうと必死だった。足りないながらも頑張って、生き続けようとしてくれた。

その事実に初めて、思った。ああ、なんて愛しい身体なんだろう、と。その瞬間、ようやく自分の身体を受け入れられたような気がした。

自分の身体を認められたことで日常生活にも変化が

赤いハートの飾りを持つ手

色々と足りない頑張り屋の身体を好きになれたら、面白い変化が現れた。まず、驚いたのが、食べるのが楽しいという気持ちが芽生えたこと。ちゃんと健康でいてほしいと自分自身に対して思えるようになったからか、昼食を毎日摂るようになった。

食事の内容も変わり、以前は時間がないから…と、昼食を摂る時はラーメンばかり選んでいたが、自分のためにTiktokなどで見つけた時短ご飯を作るようになった。

仕事が忙しいから食べなくてもいいではなく、ご飯の時間もとれないような働き方なら、見直すべきだという考えに変わったことも面白かった。

また、「自分を気遣う」が自然とできるようになっていった。身体が疲れていたら、パートナーに「今週末はご飯作りを休みたい」と言えるようになった。空腹を我慢せず、自分を満たすために夜食を食べる。頑張りたくないと思う日は、夜ご飯を手抜きする。

そんな小さな変化が自分にとってはとても大きく、日常の中で感じる負担が減っていった。

誰かのためではなく、“自分のため”に生きる

花瓶に入った黄色い花

生活が変わると、価値観にも面白い変化があった。私はずっと、誰かありきの自分だった。同じ病気の子どもを持つ親御さんから、「こんな風に普通に生きられるんですね」と言われてようやく、生きていてもいいと言われている気がした。

自分を大切に思えない私は、自分のために生きることができなかった。誰かの希望になることでしか、命の価値を測れなかった。

でも、そんな生き方はもういいやと今は思う。たとえ、誰の希望になれなくても誰かの望みを叶えられなくても、私は私として日常を楽しむために生きる。それでいいし、そういう生き方がいいと思うようになった。

誰かのために生きようなんていう、大それた重い目標は背負わなくてもいい。あのテレビが楽しみだから仕事を頑張る、行きたいライブがあるから死ねないと、自分を満たす小さなご褒美のために生きよう――。そう思えるようになったら、やっと生きることが楽しくなってきた。

自分の命や身体の頑張りは、軽視してしまいやすい。けれど、もどかしいことや足りないことがあっても、自分の身体は偉く、価値がある。持病を受け入れることはなかなか難しいものだが、頑張り屋の身体の声に耳を傾け、自分の命の価値を知ってほしいと思う。出来損ないの身体なんて、この世のどこにもない。

アピールしたい職歴・スキルだけで応募できる!
ABOUT ME
猫の下僕のフリーライター。愛玩動物飼養管理士などの資格を活かしながら大手出版社が運営するウェブメディアにて猫に関する記事を執筆。共著作は『バズにゃん』。書籍レビューや生きづらさに関する記事も執筆しており、自身も生きづらさを感じてきたからこそ、知人と「合同会社Break Room」を設立。生きづらさを抱える人の支援を行っている。