短期記憶障害を抱える僕はどうやって家族と一緒に障害を受容してきたか

自宅で子供たちと一緒にソファに座っている父親の後ろ姿。

これまで重度の身体障害と高次脳機能障害を抱えながら、3人の子育てに奮闘する僕について何度か記事を書かせていただいてきました。今回は僕の持つ高次脳機能障害の中でもかなりやっかいで日常生活に影響を与える短期記憶障害について、リアルな日常生活も書くことで少しでも理解していただけたら嬉しいです。

はじめに

これまで重度の身体障害と高次脳機能障害を抱えながら、3人の子育てに奮闘する僕について何度か記事を書かせていただいてきました。

僕は多くの人たちに高次脳機能障害についてもっと知ってもらいたいと日々考えています。

今回は僕の持つ高次脳機能障害の中でもかなりやっかいで、日常生活に影響を与える短期記憶障害について、リアルな日常生活を書くことで少しでも理解していただけたら嬉しいです。

障害の特性と症状

古びた木製の箱。

高次脳機能障害とは、ケガや病気によって脳に損傷を負った人に表れる症状です。高次脳機能障害と言っても、脳のどの部分に損傷を負ったのかによって出てくる症状は変わってきます。

僕の場合は記憶障害の中でも短期記憶障害という症状が顕著に表れています。

「短期記憶障害とは何か」ということですが、物の置き場所を忘れたり、新しいできごとを覚えていられなくなることです。

短期と名前がついているだけあって、一瞬で忘れます。大げさでもなんでもなく3秒前のことを忘れてしまうことさえあります。

日常生活での影響

たとえば、探し物を見つけた矢先に、ちょっとどこかに置いて戻ってきてまた「ないない」と言って探すことを繰り返すなんてことも日常茶飯事です。

仕事で電話対応をしていて保留ボタンを押した後、誰から誰にかかってきた電話なのかわからなくなってしまい注意されたことも何度もあります。

そんなことの積み重ねで障害を負った後に初めて就いた仕事は契約が更新されることはなく。これはなかなか精神的にきつかったです。

電話の受話器を持つ手。背景にはデスクと書類が見える。

家庭での影響

私生活ではもっといろいろな部分で苦労します。幼稚園児の子供には朝怒ったことを忘れ、夕方また同じように怒り、子供に「パパ、朝同じこと怒って言ってたよ。」と言われても、一度言い出した以上引くに引けず、あたかも初めてかのように怒ったこともあります。

バス停などで子供の友達の親御さんと会った時ほど気まずいことはありませんでした。僕からしたら、見たこともない人からいきなり親しげに挨拶をされたり話しかけられたりするのですからびっくりです。

そんなとき僕はにこっと会釈します。そしてあたかも全てを覚えていたかのように振る舞うのです。

奥さんの気づきと対応

そんな日常生活が続いたため、奥さんはかなり早い段階で「これはおかしいぞ!?」と気付いたようでした。「これは覚えていない」「あやしいぞ」「覚えているふりをしているだけだ」となったのです。

奥さんが言うには、僕の障害の症状の中でも知っているふりをしている時が一番厄介だそうです。さも覚えているかのように相槌を打つために、普通に接した人にはわかりづらいそうです。

しかし、結婚して日常生活を共にしている奥さんは経験からすぐにわかります。これは「うそ」だと。そして、奥さんからの指摘が入ると、またたく間に僕の話のつじつまがあわなくなり、あえなく白旗を上げることになるのです。

それから、僕は奥さんに対して無理に嘘をついたりすることがなくなりました。

まとめ

これは高次脳機能障害の数あるうちのほんの一つの症状に過ぎません。人によっては(僕もそうですが)喜怒哀楽が抑えられない症状もついてくるのですから厄介です。

家族間でこういった思い出話が出ると、本当に僕は頭が上がらない思いです。よく知ってくれている家族だからこそのフォローとも言えるかもしれません。

記憶障害そのものだけでなく、忘れてしまったことをさも覚えているように振る舞ってしまうことも時が経つと段々慣れてくる部分もあります。家族内ではいい意味でのあきらめも出てくるのかもしれません。

こうやって僕は家族を巻き込みながら少しずつ障害を受容してきたのです。

自宅で子供たちと一緒にソファに座っている父親の後ろ姿。

障害を受容していく過程で、時に失敗談は笑い話になります。不思議と「誰かを責めてもしょうがない」となってくるんです。

そうやって僕だけではなく、家族や周囲の人たちも少しずつ障害を受容してくれるようになりました。私生活と社会生活、どちらの場合においても、周りの人に障害を理解・受容してもらうことは、間違いなく当事者の心の負担を楽にしてくれます。

文章を書いている今も、「これまで高い壁もたくさんもあったけれど周りの人に助けられて生きているんだ」と感じます。

日ごろから感謝の気持ちを忘れずに、前向きに生きていきたいです。今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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ABOUT ME
身体障害者で3人の父親。身体にハンディキャップを抱えながらも人生も子育てもどっちも楽しみたいとトライ中、しかしどちらも大きな壁ばかり、乗り越えられない壁はないと信じて頑張る44歳のパパ。