僕は30歳のときに突然脳出血を起こし、その後遺症として身体と脳に障害を抱えることになりました。今回は僕が抱える障害の特性についてどんな症状が実際に起こるのかも含めて書かせていただきます。
はじめに
僕は30歳のときに突然脳出血を起こし、その後遺症として身体と脳に障害を抱えることになりました。
現在は、3人の子供を育てながら忙しい生活を送っていますが、障害は日常生活と社会生活に大きく影響してきています。
今回は僕が抱える障害の特性についてどんな症状が実際に起こるのかも含めて書かせていただきます。
身体の障害
僕の障害は大きく分けて、2つあります。
まずはパッと見で伝わりやすい身体の障害です。僕は左足と左腕に麻痺があり、全く動かすことができません。他の人からはかなり不自由そうに見られますが、実際は見た目で障害が伝わるため、理解や手助けをしてもらいやすいと感じています。
高次脳機能障害
結果として、身体障害は物理的な制限をもたらすものの、僕にとってより精神的にきつく、乗り越えなければいけないことが多かったのは次にご説明する障害です。
それは高次脳機能障害によってもたらされている脳の障害であり、高次脳機能障害とは、ケガや病気によって脳に損傷を負った人に表れる症状です。
高次脳機能障害と言っても、脳のどの部分に損傷を負ったのかによって出てくる症状は変わってきます。当事者一人ひとり、その症状は様々です。僕の場合は、日常生活や社会生活を困難にする症状がいくつかあります。
記憶の障害
1つ目は記憶の障害です。具体的には短期記憶障害という症状が僕には顕著に表れています。これは日常生活を送る上でとても厄介な症状です。
たとえば、僕は現在テレワークで仕事をしています。昼食は自宅でひとりでとるのですが、それも一苦労です。僕は「危ないから火を使わないでくれ」と言われているので、奥さんが出勤前に僕の昼食を準備してくれています。
奥さんはいつもその日の昼ごはんがどこにあって、どのように食べればよいかを一通り説明してくれているのですが、僕は昼ごはんのことが不安になってしまい、何度も場所や食べ方を聞き直してしまいます。
奥さんもその都度質問に答えてくれますが、うちには幼稚園児がいる上に、奥さんも自分の仕事の準備をしなければいけないので、朝は忙しいのです。
奥さんには「さっきも言ったよ」と言われるのですが、僕は毎回初めて聞いたように感じています。しばらくすると質問したことを忘れて不安になり、何度も聞くことになってきりがない、といった具合です。
結局、口頭の説明だけでは覚えられないので、細かくメモに書いてもらうことでしのいではいますが、これだけでもかなり家族の負担になっているのは間違いありません。
半側空間無視
2つ目は半側空間無視という症状です。これはあまり知られていませんが、簡単に言うと右脳に損傷を負うことにより左側の空間をうまく認識できなくなる症状です。
たとえば、目の前のお盆に置かれたご飯の右側に置かれたおかずだけを食べて、向かって左側にあるおかずには手をつけずに「ごちそうさま」をしてしまったりします。嘘みたいに聞こえるかもしれませんが、目の前にあることに本当に気づかないのです。
半側空間無視は、視力に問題があるわけではありません。実際には見えているのにも関わらず、認識することが難しくなってしまうのです。この症状は仕事面にも深刻な影響を与えていて、気を抜くとパソコン画面の左半分の見落としが増えてミスにつながってしまいます。
構成障害
記憶障害と半側空間無視だけでも大変ですが、僕は他にも構成障害を抱えています。これも理解しづらいと言われるものなのですが、物事を立体的に考えることができなくなっています。
入院時には病院から外に出られなくなったり、30年以上住んだ実家の団地で迷子になって助けを呼んだりという経験もあります。
今はスマホの機能を活用することで少し対処できるようになってはいますが、それでも家族でスーパーマーケットやデパート、ショッピングモールなどに出かけるときは迷子になってサービスセンターに呼び出されることがよくあります。
家族への影響と感謝
高次脳機能障害は脳を損傷することで表れる症状ですが、なかなかその症状が理解されづらく、見た目以上に日常生活に深刻な影響を与えています。
おそらく、家族にとって最も影響のある高次脳機能障害の症状は感情のコントロールが難しくなることでしょう。
今でこそ少しずつ怒りの感情を抑えることができるようになってきましたが、僕は障害を負ってから怒りっぽくなりました。家族に八つ当たりをしてしまったこともあります。何かがあるとすぐに落ち込んでしまい、ネガティブな感情に押しつぶされそうになることもしばしばです。
家族、とりわけ子供たちに強く当たってしまったことは、数年経った今でも思い出して後悔することがあります。
身体だけではなく、このような高次脳機能障害を抱えて社会復帰することは非常に困難を極めました。頭で理解できていても、やはり人間は感情で動く生き物ですから、本当の意味での障害の受容は難しいです。僕は今でも手探りの状態かもしれません。
ただ、覚悟を決めて、できる限りの対策をとって、それを積み重ねていくしか道はありませんでした。少なくとも僕はそうやってできない自分を受け入れて、子供を育てることに覚悟を決めて、人に当たり散らすよりなるべくたくさん感謝をしようと心がけながら生活しています。それは家庭でも会社でも同じです。
僕はきれいごとだけで障害を乗り越えることはとてもできませんでした。
それでも、家族や職場での協力があって今の生活を送ることができているので、周りへの感謝だけは忘れずに生きていこうと思っています。子供たちがそれを見て何かを感じ成長してくれたらそれでよいのかな、と今は思っています。
まとめ
今回は障害の特性についてどんな症状が実際に起こるのかも含めて書かせていただきました。
ここでご紹介した話は、本当に日常茶飯事で起こることです。僕と同じような症状を抱えている方もたくさんいますし、似たようで違った障害をお持ちの方もいるでしょう。
僕の話がそういった方々やその周りの人たちが障害当事者の理解を深めてもらえるきっかけに少しでもなることができたら、幸いです。今回も読んでいただき、ありがとうございました。