客観的に自分を見つめられなければ、自分のやりたい仕事は手にできない。

車椅子に座って道を進む女性、背景には住宅街が広がっている。

16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車いすに。自分がやりたいと思う仕事をするのは簡単なことじゃありません。やり続けることも。大切なのは客観的に自己分析すること、時には自己否定まですること。私が普段から心がけていることとは。

会社勤めと起業の経験について

まず最初に断っておきたいのが、私は会社勤めの経験が無いわけではないのですが、本当に小さな企業で2年しか勤めたことがないのであまり大きなことは言えません。

起業し、経営者をやった経験もあることはあるのですが、こちらも2年程で辞めてしまいました(会社自体はまだ存続しています)。

今はフリーランスとして細々とやっています。障害年金はもらっていますが、家族などからの支援はなくとも、なんとか自立して生活できています。

フリーランスをやっていて思うのが、できれば会社勤めのほうがいいということです。

まず一番に収入が安定しません。月によっては全く仕事がないということもありえます。

遊べてラッキーだとか、勉強に専念しようとか、前向きに捉えることができる性格あるいは経済状況なら大丈夫だと思いますが、先の暮らしが気になるとなればやっぱり毎月決まった日に決まった額をもらえるほうが精神的に何よりいいような気がします。

フリーでも定期的に仕事を回してもらえるパイプがある、契約があるなら問題ないですが、基本的にはその都度ごとの契約になります。次の仕事をもらえる保証はなく、それがいつのことになるのかはわかりません。

そのためなるべく広く仕事を受けられるようにしておき、クライアントとの信頼関係を大切にする必要がありますが、前の記事に書いたように、納期が混み合うこともあります。そうなるとてんてこ舞いです。誰にも代わってもらうことはできません。

身体1つが資本ですから、身体だけは壊さぬように頑張るしか無いです。

納期が守れないと信用にも関わってきます。今のところ、納期に大幅に間に合わなかったというような経験はないですが、いつも心配はしています。

会社勤めならある研修などの教育の機会も、フリーランスにはありません。

会社勤めの場合、毎年新入社員に受けさせているような質の良いこなれた研修などがあって、効率よく学ぶことができますし、わからないことは先輩に聞くこともできます。

しかしフリーランスは日々アンテナを張って自分で勉強していく必要があります。

わからないことを誰かに聞く、ということも難しいので、同業者と知り合う機会を自分で作っていかねばなりません。

私はツイッターで自分の興味のある情報を積極的に発信している人をなるべくフォローして日々トレンドを追いかけるようにしています。

暇なときには本を読んでインプットし、それを元に考えたことは忘備録も兼ねてツイッターで発信します。するとやはり、似たような情報に興味のある人達にフォローされやすくなり、より興味のある情報に触れやすくなっていきます。

夜空に輝く三日月。
photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)

フリーランスと社会的信用の難しさ

社会的信用を得るにも、会社勤めに比べてすぐには難しいでしょう。

車いすに乗っている若い女が詩人として活動しています、と言ってみたところで、実に怪しげではありませんか(覚えてもらいやすくはありますけども)。

今はSNSで情報発信が出来るので、そちらでどんな人間かや普段考えていること、やっていることを可視化出来るため、信用も得やすくはなりました。それでも社会では企業名の入った名刺には及ばないと感じることもあります。

ですから、誰もが知っている大手企業からの仕事があると銀行でお金を借りるときとかに大変助かります。N○K様様です。ありがとう、N○K。

それでもフリーランスをやる最大のメリットは、その名の通り自由であることです。

自由と言っても時間と就業場所が自由なだけですが、ただでさえ私自身が私の身体の都合に合わせて日々生活しているので、まして組織や他人の都合に合わせて動くということに向いていません。

出退勤がルーティンで決められていない、基本的に納期はあっても拘束時間がないということは私が仕事をする上で何よりも都合がいいです。

仕事をしている間も自分の体調を気にしていないといけないのはストレスフルで仕事に集中できません。自宅であれば急な体調の変化にも自分で対応できます。他者に気を遣わせなくていいというのも、心の負担が軽いです。

テレビやラジオ等の出演や講演会など出向いてする仕事もありますが、毎日ではないのでなんとか都合をつけますし、先方も事情をわかった上で仕事を依頼してくださっているので出来る限り都合を合わせてくださいます。

今はコロナで減りましたが、直接会っての打ち合わせもこちらの指定した理解ある喫茶店に来ていただく事が多いです。これも個人として仕事をしているメリットかもしれません。

コロナによってリモートワークが増えたことは、地方住みの移動に制限のある障害者にとっては就業のチャンスかも知れないと思います。

在宅で、パソコン一台で仕事ができるのなら、健常者と遜色なく働けます。これは「障害者」の定義が変わってしまうようなことかもしれません。

車椅子に座って道を進む女性、背景には住宅街が広がっている。
photo by August(https://twitter.com/a__ugust__us)

自己分析と自己否定の重要性

会社勤めにしろ、フリーランスにしろ、仕事をする以上は一定の能力が必要になってきます。

能力は、なければ身につければ良いし、どうしても身につけることができないのであれば、なにか解決策を探せばいいので、能力がないこと自体はそんなに問題にはなりません。

しかし、当人が自分に能力がないことを認めることは、なかなか難しいことかもしれません。

これは仕事において障害者が健常者に配慮を求めるときも同じで、他者にできないことを認めさせる(一方的に配慮されて当たり前だと思いこむ)のではなく、まず自分自身ができないことを十分認める(自分も配慮する側であることの自覚を持つ)ことをしておかないと、関係性がいびつになってきます。

仕事をこなす能力がないことを認められない以上、改善の余地はなく、成長は見込めませんし、何より業務に差し障りが出ます。すると評価もされませんし、最悪の場合、職場に居づらくなってきます。

自分自身を客観的に分析する力、正しく自己否定する力が大切です。

結果が良くても悪くても、常にアラ探しをします。何か問題点が見つかれば、自分に原因はなかったかを検討する。なにか改善する余地はないか、次回同じようなことをするときにより良い結果を出すためにはどうしたらいいかを考えます。

今回が80点なら、どうすれば90点や100点になり得るか。それを考えることは自分と向き合うことであり、能力をつけるための一番の近道だと思っています。

会社組織なら、個性よりも能力または人間性が重視されうると思いますが、フリーランスでは個性も能力や人間性と同様に、あるいはそれ以上に必要になってきます。

勇気がいることではありますが、旗幟を鮮明にしておくことが何よりも鍵になると私は思います。

組織の中であまりに自分の立場をはっきりさせると、やりにくさを覚えることがあると思いますが、フリーランスであれば、それがむしろ武器になる。

テレビのディレクターに「豆塚さんは根が暗くて少し斜に構えているところが魅力です」と言われたことがあります。

私はそういう自分を隠してつい真面目で良い子ぶってしまうので、そう言われたときはショックで、でもなんだか気が楽になる部分もあって、複雑な心境でした。

集団で居るとき、ネガティブで毒のある人は嫌われがちです。

少人数の仲のいい人でいっしょにいるとお互いを口汚く罵り合うのを楽しんだりしてしまう程度には性格が悪いので、なんとか隠すわけですが、フリーで働く場合、そんな私を気に入ってくれる人がわざわざ私を指名して仕事を振ってくれるわけです。

そのほうがうまくいくに決まっています。だからあえて、変に繕わずに自分を出す努力をしています。

とはいえ、「自分らしさ」は意識して出せるようになるものでもないように思います。物事に一生懸命取り組んでいると、良くも悪くもどうしてもにじみ出てきてしまうものです。

それを肯定してくれる他者と巡り合うこと、一緒に仕事をしたいと思える仲間ができることによって、よりはっきりした個性になっていくのかもしれません。

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ABOUT ME
1993年生まれ。詩人。16歳の時に飛び降り自殺を図り頸髄を損傷。以後車椅子に。障害を負ったことで生きづらさから解放され、今は小さな温泉街で町の人に支えてもらいながら猫と楽しく暮らす。 ■詩集の購入はこちら