就職・転職活動の前に必ずやらなくてはならないことが「自己分析」です。しかし、自己分析はどこまでやればいいのか終わりは見えず、答えも方程式もありません。そこで今回は自己分析の切り口のひとつ「Will・Can・Must」をご紹介します。この3つをクリアすれば、自己分析もサクサク終わります。障害者の就職活動・転職活動へのお役立ちコラムです。
自己分析には、答えも方程式もない
就職活動や転職活動において欠かせないことが「自己分析」。
自分がどのような性格なのか、価値観なのか。自分がどのようなキャリアを歩みたいのか。どのような仕事に就きたいのか。こういったことを自分なりに考え、明確化することが「自己分析」です。
障害のある方の場合は、ここに自分自身の障害理解も加わります。
自己分析には答えがありません。そして、こうすれば自己分析できる!という方程式もありません。
そこで今回は、障害者の就職活動・転職活動に役立つ自己分析の切り口のひとつ「Will・Can・Must」をご紹介します。
Will:やりたくないことを考える
自己分析の切り口「Will・Can・Must」。まずは「Will」からご紹介します。
そもそも「Will・Can・Must」は自分自身のキャリアを考えるとき、「Will:やりたいこと」「Can:できること」「Must:やるべきこと」は何かを考えてみましょうというものです。
例えば、とある企業で働いて3年目、「Will・Can・Must」を用いて、自分の今の仕事を整理し、1年後・3年後のなりたい姿を描いてみようというように活用されます。
本来「Will」は「自分のやりたいことは何か?」を洗い出すためのキーワードですが、これから働きたい、就職・転職活動に臨もうというとき、やりたいことが明確にある人は、自己分析に苦労しません。
そこで「やりたいこと」ではなく「やりたくないこと」に注目するのが「Willの使い方」です。
・こんな仕事はやりたくない
・こんな働き方はしたくない
・こんな職場で働きたくない
・こんな上司や先輩とは一緒にいたくない
今、4つの例を挙げましたが、皆さんは自分の「やりたくないこと」を回答できましたか?この「やりたくないこと」を回避できる仕事・職種・働き方・会社を選べれば、失敗しない就職・転職活動になります。
「やりたいこと」を明確にし、企業を選ぶのはなかなか難しいものです。やりたいことを明確にすることがそもそも難しいですし、自分のやりたいことができる企業選びも簡単ではありません。就職したらやりたいことができなかったという企業も少なくありません。
したがって、自分の「やりたくないこと」を明確にし、出会った企業すべてに「やりたくないこと」を照らし合わせることができれば、企業選びは案外スムーズに進むのです。
逆張りの考え方、とも言えますが、「やりたいこと」が明確にならない方は、ぜひ「やりたくないこと」を明確にしてみてください。
Can:できないことを整理する
自己分析の切り口「Will・Can・Must」。次は「Can」です。
「Can」の考え方は単純明快で「できないこと」を整理することです。それも、自分の障害が理由でできないことを考えることです。
障害者には自分の障害が理由でどうしてもできないこと、向いていない仕事があります。耳が不自由な方に電話応対の仕事は難しいですし、目が不自由な方に一日中細かい文字や図表とにらめっこするような仕事は疲労が加速度的に溜まっていくはずです。
自分の障害が理由でできないことは何か?を明らかにするだけで、自分が目指せる職種や仕事を絞り込むことができます。100ある仕事が80に絞り込めただけでも、自己分析は大きく進みます。
また、ここでは仕事の経験やスキルによる「できないこと」は考えません。基本的に、自分の持っているスキルや経験しか使わない仕事は世の中にないからです。
違う会社に転職すれば、一から覚えなくてはならない仕事は確実にあります。自分の「できること」しか使わない会社は存在しません。
そして、できないことができるようになることが成長です。できることのみを取り扱うのは現状維持でしかないのです。
何ができるのか、ではなく、何ができないのかを考える。これも逆張りの考え方ですが、ぜひ試してみてください。
障害が理由でできないことがあるが、どうしてもこの仕事にチャレンジしたいんだ!と思う場合は、その仕事にチャレンジしてみましょう。その気持ちがあるだけで、自己分析は終わっています。
Must:必要な金額(年収・月収)を知る
自己分析の切り口「Will・Can・Must」。最後は「Must」です。
「Must」はやるべきこと(やらなくてはいけないこと)と言われますが、自己分析のときは「稼ぐべき金額」を考えてみましょう。
お金の話を考えるのは、意外と苦手な人も多く、また気乗りしない人もいますが、就職・転職活動においては一番大事なことです。特に、転職活動において。
自分が月収でいくら欲しいのか、年収でいくら欲しいのか、普段の生活でどれくらいの支出があるのか、払わなくてはいけない金額(借金やローンなども含め)はいくらあるのか、などを整理し、自分に必要な給与額を考えます。
障害年金や各自治体の障害者福祉の支援金額を受給している場合は、月々に稼ぐ金額は少なくてもいいのかもしれません。
実家暮らしか一人暮らしか、家族はいるのか独り身かという違いでも、生活にかかるコストはだいぶ異なります。
こういった経済面の自己分析をすることで、一般就労か福祉就労か、正社員を目指すのかアルバイトでいいのかといった向かう先が見えてきます。これも立派な自己分析です。
最後に
今回は、自己分析の切り口「Will・Can・Must」をご紹介してきましたが、冒頭でお伝えしたように、自己分析に答えも方程式ありません。あくまで、こういう手法がありますが、試してみませんか?というものです。
「とりあえずやってみる」という精神やスタンスのほうが、自己分析だけでなく、その後の就職・転職活動、そして入社後の活躍につながります。
この文章を読んだ上で、試したくない・嫌だという気持ちが湧いてしまえば無理強いはしませんが、ぜひ一度試していただければと思います。