私は先天性の視覚障害者で、両目視力0の全盲です。今回は全盲の視覚障害者がどのようにスマートフォンを使っているのかについて、私が使い始めたきっかけを紹介しながら、書いていきたいと思います。
はじめに
私は、先天性の視覚障害者で、両目視力0の全盲です。色や形などはもちろん、光も感じることができませんが、普段は、視覚障害者を対象にIT情報機器のサポートを行う仕事をしています。
ここ数年、日常生活の中でパソコンとスマートフォンを利用する場面が増えてきていますが、パソコンやスマートフォンの操作のスキルは十人十色。特に、スマートフォンには、物理的なボタンがほとんど付いていないので、視覚障害者が平面の画面をどのように操作するのか不思議に思われる方がほとんどではないかと思います。
今回は全盲の私がスマートフォンを使うようになったきっかけや、どうやってスマートフォンを操作しているのかについて書かせていただきます。
スマートフォンを使うようになったきっかけ
スマートフォンを使うようになったきっかけは、2013年にガラケー(ガラパゴス携帯)の調子が悪くなってきていたことです。これを機にスマートフォンに変更してみようかと思い始めました。
視覚障害者が音声ガイドを頼りに使うスマートフォンが市場に出回っていたことは知っていたのですが、あの平面の画面を操作する自信がなく、かなりの時間悩みました。
当時、視覚障害者向けのスマートフォンユーザーが登録していたメーリングリストに入って「実際に視覚障害者がスマートフォンを使ってみてどうだったのか」の情報の収集をしながら、さらに悩みました。そして、1年ほど経過した2014年、ついにスマートフォンデビューを果たすことが出来ました。
自分がスマートフォンを使いこなせるかはわからなかったので、最初はガラケーとスマートフォンの2台持ちにしました。電話アプリの使えないスマートフォンを操作のトレーニング用に購入して、3か月くらい使ってみました。操作にある程度慣れてから、スマートフォン1台に絞ったのです。
トレーニング用の端末では、画面下部に丸いボタンが一つあるだけで、あとは平面の画面ですので、操作を実行するためのボタンなどを探すのが大変でした。その都度メーリングリストのメンバーに質問しながら、指での操作を繰り返し練習しました。
はまると熱中する性格なので、仕事などの生活必要最低限の活動以外の時間はスマートフォンの指でのジェスチャーの練習に費やしました。
練習用端末でトレーニングしたおかげで、スマートフォンに変更した後、スムーズにいろいろなアプリを使えるようになり、やってみたかったコミュニケーションアプリでの通話も行うことが出来ました。
もう一つ、トレーニングで大変だったのは、文字を入力することでした。
狭い画面の範囲内にあるスクリーンキーボードで、文字を探して入力する中で、入力したい文字をタップしたときに少し指がずれてしまい、違う文字を入力してしまうという繰り返しでした。
しかし、入力方法が数種類用意されているおかげで、自分に合った入力方法が見つかり文字をスムーズに打てるようになったのです。
目が不自由な人のスマートフォンの使用方法
スマートフォンを使う上で、利用目的で考えれば全盲の方と視力がある方との差はないと思います。
視覚障害者の場合、スマートフォンが生活支援ツールになることがあります。
例えば、全盲の私では明るさをチェックする機能がついている視覚障害者支援アプリを使うことによって、電灯がついているかどうか確認することが出来ます。
基本的にはどのようなアプリでも音声ガイドを利用して使えなくてはいけないのですが、全く使えないアプリであったり、ある機能は使えるがある機能は使えないという問題点があります。
しかし、アプリ内の一部使える機能が、私のような視覚障害者にとって有効な機能であれば、それは良いアプリという評価を得ることにもなるのです。
まとめ
スマートフォンに切り替えるとき、画面上での指のジェスチャーの練習が一番大変でしたが、その結果、ガラケーのときからやっていた SNS やコミュニケーションアプリでの通話が出来るようになりました。
これはITサポートをしていて気づいたことですが、スキルが上がってくる方に共通しているのは、目標を持って学習に励まれているということです。たとえば、いい音でラジオを聴きたい、ある動画サイトで音楽を聴きたいといったはっきりとした目標を持つことがスキルの向上に大きくつながっていきます。
何か一つでも、やりたいことが出てきたときが、新しい何かを学習する時期です。働きたい、自立したいという気持ちは大切です。