私は22歳のときにてんかんと診断されました。てんかんは周囲の人から見てわかりづらく、その分理解してもらうことがむずかしい障害でもあります。今回は、てんかん障害者は何故働きづらいのか、そしてあったらいいなと思う配慮について考えてみました。
はじめに
私は22歳のときにいきなり意識を失い、痙攣を起こして泡を吹いて倒れ、救急車で運ばれた先の病院で医師から「てんかん」と診断されました。
てんかんとは、突然意識を失って反応が無くなるなどの「てんかん発作」を繰り返す病気のことです。てんかん発作は一時的なもので、発作が終わると元通りの状態に回復します。
てんかんは周囲の人から見てわかりづらく、その分理解してもらうことがむずかしい障害でもあります。今回は、てんかん障害者はなぜ働きづらいのか、そしてあったらいいなと思う配慮について考えてみました。
業務内容について明確な制限がある
てんかん障害者はなぜ働きづらいのか。
みなさんが想像しやすそうなところで言えば、業務について明確な制限があるということがあります。
たとえば、運転を行う業務(配送業・バスやタクシーの運転手など)については、基本的に医師に止められています。運転中、意識を失うと大惨事に繋がりかねないからです。
次に、泳ぎを必要とする業務(水族館のインストラクター・ライフガード・水泳選手など)も医師に止められています。水泳中、意識を失う場合もあるので溺れる危険性があるからです。
そして、高所で行う業務(板金業・大工・鳶職など)も医師に止められています。高所で意識を失った場合、地面まで落ちてしまう危険性があるからです。
「倒れていない時=健常者の状態」ではない。
働きづらさについては、業務内容が制限されていることだけではありません。
みなさんはてんかん障害者について、倒れなければ健常者と同じ状態だと思っていませんか?実は倒れていなくても辛い思いをしている事が多いのです。
まずは、服用している薬の副作用が挙げられます。めまいや眠気、薬剤性パーキンソニズム等、様々な副作用があります。また、倒れていなくても、注意・集中困難・神経痛・筋肉痛・倦怠感・脱力感・無気力感など、多岐にわたる症状に悩まされています。
抗てんかん薬を飲んでいれば100%発作が抑えられる、というものでもありません。単純に薬量を増やせば、過剰摂取となったり、より一層副作用に悩まされる事にもなりかねません。
発作についても誤解されやすい部分があり、発作が起きた場合、意識を失って倒れる場合もあれば、意識を失わずに倒れない場合もあります。
脳全体に発作が起きると、意識を失ってしまい、活動中であれば倒れることになります。意識を失わずに倒れない場合は、周囲の人から見れば「わかりづらい」のですが、脳内は部分的に意識消失の発作が起きており、すぐに倒れることはありませんが、ボーッとして暫く動くことができなかったり、人の話を上手く聞き取ることができなかったりします。
副作用も意識消失の発作も「わかりづらく」、時と場所を選ばない。「てんかん障害者が倒れていない時=健常者の状態」ではないのです。
人間関係の軋轢が生じやすい。
てんかん障害者が抱える「わかりづらさ」によって、副作用や症状からくる不調に気付かれることはほとんどありません。お互いの認識にズレが生まれてしまい、双方に負担がかかる状況につながりやすくなります。その結果、業務中のパワーハラスメントなどに遭いやすくなってしまいます。
例えば、てんかん発作の後に「何をボーッとしてるの?ちゃんと動いてよ。それは先程言ったでしょ?何回同じ内容の質問をするの?」というような内容のことを言われたことがあります。
てんかんの影響だということを理解してもらえないと、仕事のやる気がない、もしくは話を聞いてもわからない人だと誤解されてしまいます。
一度言ったことを私が覚えていないと、相手は「伝わっていないかもしれない」という不安を抱くのかもしれず、以前教わった内容であっても「その都度、最初から最後まで教えてあげなければならない人」というレッテルを貼られたような接し方をされてしまいます。
意識がないときは丁寧な説明が助かりますが、繰り返しの説明や、何度も仕事をチェックされることで、プレッシャーをかけられているように感じます。
こういったトラブルの積み重ねが、職場の人間関係の問題に発展し、「働きづらさ」につながります。人間関係の軋轢が生じやすい存在と思われてしまうのは、組織で働くにあたって致命的と言わざるを得ません。働き方に工夫が必要なのはそのためです。
「あったらいいな」と思う配慮について
ここまで、てんかん障害者の「働きづらさ」について説明をしてきましたが、ここからはどうすれば働きやすくなるのか、どんな配慮があったらうれしいのかについてです。
てんかん障害者が直接社会に参加する場合(毎日、会社に出勤する従来の働き方の場合)、出退勤時刻の調節や休憩休暇、教育についての配慮があると大変助かります。
例えば、勤務時間が8時30分から17時30分の場合、「今朝は部分発作があって、なんだか調子が悪い」という時には、9時出社にして18時退社を認めていただくだけでも助かります。部分発作が収まってから出社するだけで退社時刻まで働くことができるようになります。いわゆるフレックスタイム制に近いかもしれません。
また、休憩時間についても体調が悪くなったときには規定の時間以外に取得できるようにしてもらえると、良好な状態で働ける時間が長くなります。「部分発作の兆候があって少し休みたいな」と思うタイミングで小休憩を取得できると、回復して退社時刻まで働けることもあるのです。
他にも、朝から意識消失して倒れてしまったときなどは当日の朝に有給休暇を取得できたり、調子が悪くなってきたら早退させてもらったりできると大変助かります。調子が悪いときには早めに休めると、安定して働き続けられるようになります。
勤務時間や休みについて以外だと、教育への配慮があるとありがたいです。私が困りやすいのは、仕事の情報伝達がうまくいかないことなので、教育担当者と業務についてすり合わせや確認する時間を設けていただけると助かるのです。
業務の引継ぎや指示を聞くときはメモに控えさせてもらい、そのメモの内容を教育担当者と話し合う時間があれば、早めに抜け漏れや誤解を防げます。教育担当者を限定してもらえると、多くの人が確認する手間が省けますし、私も複数の先輩に確認して混乱するようなことが無くなり、ミスや行き違いも減っていくはずです。
最後に
「あったらいいな」と思う配慮について色々書きましたが、私自身、ここまで配慮してもらっていません。だから「あったらいいな」なのですが…。
会社には就業規則もあるので、どこまで配慮してもらえるかは職場ごとに異なると思いますが、とにかく上司に相談することが大事だと思います。相談すると、意外と配慮していただける場合もあるので、相談もせずに退職するのは勿体無いと思います。
私自身、残業について、土日の出勤日数について、変則シフトの出勤回数について、リフレッシュ休暇について、昼休憩時間の確保について等、上司と相談しました。就業規則を読んで疑問に思ったことについて確認したりもしました。その上で休職制度も利用しました。
現在の私の職場における立場は、可能な限り配慮して頂いた結果なのだろうと思います。「欲を出せばキリがない」と思いながら、自分と折り合いを付けて働き続けて、入社7年目になります。無理は禁物ですが、このようにして働き続けることもできるのだなと思いました。