12年間クローズ就労をしていた私が障害枠の転職活動をして感じた両者のちがい

天秤に乗った青とオレンジのブロックに疑問符が描かれている。クローズ就労と障害枠の就労の違いを示唆している。

27歳でADHDと診断された、大人の発達障害当事者である私が、4回転職しながら合計12年間一般枠で働いてきて、今回、はじめて障害者雇用枠で転職活動をしてみて感じた両者のちがいについてまとめました。

大人の発達障害当事者から見た、一般枠と障害者雇用枠の違い

仕事を始めてから、最初の5年くらいは苦労の連続でした。

自分では頑張っているつもりでもなかなか仕事ができるようにならず、しょっちゅう心身の調子を崩していました。「どうしてこんなにうまくいかないんだろう」と思っていた27歳のとき、ADHDと診断されました。

ADHDと診断された後も7年近く自分の障害を隠して働いてきましたが、今年の始め頃に「このまま仕事を続けることは難しそうだな」と感じる出来事がありました。

色とりどりの矢に突き刺された赤いハートのイラスト。
交渉や調整が苦手なADHDの私に訪れた危機とそこから得た学び。昔から交渉や調整が苦手だ。想像しただけでしんどい。どこまでが発達障害の影響かはわからないけれど、私と同じように交渉が苦手な発達障害当事者は多いと思う。今回は、間に入ることや調整が苦手な私がたくさんの失敗から得た学びについて書いていこうと思う。...

今回は、4回転職しながら合計12年間一般枠で働いてきた大人の発達障害当事者の私が、はじめて障害者雇用枠で転職活動をしてみて感じた両者のちがいについてです。

カレンダー、キーボード、履歴書、ペンが置かれたデスク。

①求人の選び方

堂々と書くことでもないですが、私は28歳までに4回の転職経験があります。大学の進路相談室、ハローワーク、人材紹介会社、求人サイト、様々な方法で求人を探して応募してきました。

ただ、はじめて障害者雇用枠の求人サイトを見たときは驚きました。

まず、サイトの設計がちがいます。勤務地や職種で検索できるのは一般枠の求人サイトと変わりませんが、中には「どんな配慮を受けられるか」や「雇用実績のある障害種別」で検索できるサイトもあります。

「求人サイトによって検索項目がここまで変わるのか」と感じました。

②求人の内容

次に気になったのは「募集している職種がちがう」という点でした。

私は24歳のときに、一般枠で事務職に応募しようとしていました。そのとき、人材紹介会社の方や、ハローワークの職員さんに「事務はとにかく倍率が高いから諦めた方がいいですよ。たとえば、この求人は100倍です。」と例を出されて、「これは受からないわ」と早々に諦めた経験があります。

障害者雇用枠だと事務職の求人がとても多いです。倍率は高いのかもしれませんが、そもそも全体の中で事務職の求人の占める割合の高さに驚きました。事務職を希望している人にとっては、障害者雇用枠の方が応募のハードルは下がるのではないかとさえ感じました。

一方で、一般枠と比べたときに「職種の幅が狭い」とは感じました。たとえば、私の現職は障害福祉の支援員ですが、障害者雇用枠だとこれに近い職種の求人もあまりありません。

障害者の支援員は一般枠だと人手不足の業界で、常に一定の求人数があるのですが、それがそのまま障害者雇用枠の求人に適用されているわけではないのかもしれません。業界や職種に偏りがあると感じます。

③面接

いくつかの企業様で面接も受けさせていただいたのですが、質問される内容もちがいがあると感じました。

一般枠で応募をしていたときは、自己PRと志望動機の二つについて聞かれることが多くありました。自己PRはこれまでの経歴で何を達成してきたか、どんな風に困難を乗り越えてきたのか、強みは何かなど、面接は自分をよく見せるためのプレゼンの場だと感じていました。

志望動機では、「事前に企業についてどれだけ研究してきたのか」を試されている感覚がありました。企業のホームページの細かいところまで読み込んでいった記憶があります。

障害者雇用枠の面接は、自己PRと志望動機よりも、退職理由と障害、必要な配慮について詳しく聞かれる印象があります。面接の内容は企業によってちがうでしょうし、応募者の経歴にもよるところがあるかもしれませんが、履歴書に障害について書く欄があるなど、見られているポイントのちがいはあると感じています。

ビジネススーツを着た面接官と応募者が面接をしている様子。

全体的に感じたこと

障害者雇用枠の転職活動は始めたばかりですし、個人的な経験に基づいた印象ですが、「一般枠の転職活動に慣れているから、障害者雇用枠の転職活動も大丈夫」とはならなそうだなと感じています。少し違いに戸惑っています。

特に私が気になったのは「かなり自己分析をしておく必要がありそう」という点です。

たとえば、自分のできること、できないこと、障害で仕事にどんな影響が出そうか、どんな配慮が必要か、自分でとっている対策、どんなことがストレスか、退職理由など、普段ならあまり他人から聞かれないようなことについて聞かれます。

私は約7年前に発達障害と診断されましたが「もし、診断直後に障害者雇用枠での転職活動をしていたとしても、うまくいかなかっただろうな」と感じています。「自分は障害がある」ということを頭では理解していても、心では受け入れられていなかったからです。

時間をかけた分だけ年齢は上がったので転職活動をする上で不利に働くこともあるでしょうが、勤怠を安定させて、仕事に対する自信をつけて、自分の過去と向き合うために必要な時間でした。

カレンダーの上に置かれた砂時計のクローズアップ。

まとめ

一般枠で4回転職しながら12年間働いてきた私が、はじめて障害者雇用枠で転職活動をしてみて感じた両者のちがいについてお伝えしてきました。

今回は一般枠と障害者雇用枠の転職活動のちがいに焦点をあてましたが、共通する部分もあると思います。基本的な選考の流れや、選考を受ける前に企業研究と自己分析が必要なことも同じです。

私のような発達障害や精神障害の当事者は、一般枠と障害者雇用枠、どちらで働くかを迷われることもあるのではないでしょうか。

私は障害者雇用枠で働いた経験はないので、転職活動をしてみてどうだったのかについてしか話せません。試行錯誤をしながら次の仕事を探している途中の身なので、あまり偉そうなことは言えませんが、一人でも多くの方が自分に合った働き方ができるといいなと願っています。

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ABOUT ME
1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。 就職後1年でパニック障害を発症し、退職。27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。プラスハンディキャップなど各種メディアへ寄稿中。